でっきぶらし(News Paper)

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42号(1984年12月)9ページ

病院だより

 一年というのは、ほんとうにあっという間にすぎていまいますネ!!この暮れになってあなたも毎日バタバタとすごしていますか?
 動物園にも、この十一月〜二月にかけて緊張している飼育課員がいます。それはクマ舎担当の職員です。
 当園のクマ舎には、ホッキョクグマ、ナマケグマ、ニホンツキノワグマがいます。そのうちホッキョクグマは十一月中旬に三回の出産がみられています。しかし昭和五十六年十一月二十一日出産の時にわずかに子の一部がみつかった以外すべてメス親に食べられてしまっています。ナマケグマも十二月中旬に五回出産していて、一回は人工哺育(途中で死亡)に切り換えましたが、昨年は食べられてしまいました。ですから今年は生まれたらすぐに取りあげることにしました。
 いつもと違う行動はないか、餌を残さず食べているかと毎日、毎日クマとにらめっこです。担当者との朝のあいさつも“おはよう”と言う前に、“変わりない?”と。
クマは御存知にように、親の体と比べてみると、はるかに小さい子供を産みます。ホッキョクグマで約六百グラムでわずかに短い毛がはえているぐらいの、文字どおりの赤子です。だから、お母さんのお腹の中にいるかいないかは、表からみても全然わかりません。妊娠しているかもしれないし、妊娠していないかもしれない…。そんな中で生まれる一瞬を待っているのですから、疲れるものです。
 話がちょっとむずかしくなりますが、赤ちゃんができるというのは、一つの卵と一つの精子がいっしょになるところから始まります。その後、分割ということをくり返して、目や耳ができ、手足もととのい、この世に誕生してくるのです。その間を妊娠期間というわけですネ!!普通、この間は休まず、子が形成されていくのですが、動物によっては途中で休んでしまっているものがいます。その一つにこのホッキョクグマがいます。あの広い北極でオスとメスが出会うチャンスは、なかなかないものです。いつ会っても、だいたい同じ時期に生まれるようにコントロールされているわけです。動物園でも4月に交尾がみられても、8月に見られても、ほぼ11月〜12月にかけて出産されています。
 さて、今年はどうなりますか…今のところ変化なしで〜す。
 追伸 ニホンツキノワグマのメス2頭も11月15日より冬ごもりに入りました。
(八木智子)

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