でっきぶらし(News Paper)

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42号(1984年11月)3ページ

良母愚母 第1回 フラミンゴ(険しい母への道)

 悲願の繁殖に成功したのは、幾度か語りました。では、その母親になるのに、あるいは父親になるのに、どうやってたどってきたのでしょう。
 チリーフラミンゴは、現在20羽。無論この中には、昨年、今年と続けてふ化した2羽の幼鳥も含まれています。そして、ペアは7組。それらのペアが次から次へと産卵したのに、無事にかえり育ったのがたったの2羽とは、ずいぶん少ないですね。しかも、2羽共に同じペアからかえったものだけに、その感じをより強く受けます。
 産卵して抱いてはいても、実に無精卵が多く、大半が途中で消えてゆきました。何とかかえりはしたものの、間もなく死んでしまったのも2例ありました。ふ化率は、1割すらも充たしていないのです。
 母親になれない、父親になれない、それが大半のペアの実情です。「切羽してしまったことが、交接の際バランスを崩して未受精のまま終え、そのまま産卵してしまう。そのようなことが、充分に考えられる。」とは、前担当者の言葉。広々したところで飼おうと思えば切羽しなくてはならないし、すれば交接に微妙に影響してくるとは、何とも頭の痛い問題です。
 そんな中で、2羽の子を育て上げたペアは立派。まさに良母、良父といえます。昨年は7月18日、今年は4月8日にかえし、このままゆけば来年の春にも朗報を聞かせてくれそうです。ただ心配は、老齢。大半が開園以来か、間もなくの来園だからです。
 これとほぼ同じことが、ベニイロフラミンゴにも当てはまります。飼われている数が、12羽とチリーフラミンゴに比べ少ないだけで、環境と条件は全く同じ。当然といえば当然です。
 3ペアながら、ひなをかえすのがうまいペアがひとつだけというのも、皮肉な感じで似ています。昨年は2組のペアがかえしたのですが、1組の方が、子と父親が妙に仲が良くなってしまい、ペアが分裂。残りの1組だけが、今年も繁殖と相成ったわけです。
 多くのペアがいて、次から次に産卵しながら子育てのできるペアが決まってしまうとは、何とも情けない話です。上手、下手もさることながら、運不運もつきまとっている、そんな思いにどうしてもかられます。そろそろ別のペアのいい話も聞きたいものです。
 とするなら、コガタフラミンゴ。5羽、わずか2ペアながら、現在抱卵中で、有力候補です。これだけでもビッグニュース。日本の動物園で繁殖例がないどころか、産卵すら稀といわれています。それが、ベニイロ、チリーフラミンゴがうじゃうじゃいる中で、体の小さいコガタフラミンゴが圧倒されながらも産卵したのですから驚きます。
 良い知らせが届けられるかどうか、この“でっきぶらし”が手元に行くころにははっきりしているでしょう。

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