でっきぶらし(News Paper)

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44号(1985年04月)7ページ

良母愚母 第五回【パルマワラビ―(良母の継承も先細り…)】

 オグロワラビーよりも、もっともっと小さなワラビー、それがパルマワラビーです。今は、たったの三頭。小さくて地味なところへきて、わずかな数とあれば、目立たなくなるのも当然でしょうか。
 しかし飼育歴はとなると、オグロワラビーよりもグンと古くなります。世代交替が進み、当初の個体はいませんが、開園時より十六年、営営と営みを続けているのです。当園にも数ある繁殖賞の中で、第一号はこのパルマワラビ―なのです。これで歴史の古さが分かって頂けるでしょう。
 もっとも、古いだけで先細りの歩み。かなり以前にもたった二頭にまで減ってしまい、そのまま日本平動物園にはパルマワラビーがいなくなってしまうのでは、と思ったぐらいです。
 その二頭が発奮。次々と子を産み、次代を狙えるだけのものを残してくれました。が、それも又先細りの傾向です。何と言っても悔やまれるのは、昨年冬のメスの事故死。柵を作る際の騒音に驚いてフェンスにぶつかり、それに首を突っ込んで宙づりになって…。
 袋の中には、まだ産まれたばかりの赤ちゃんがいました。これには二重のショック。もう一頭のメスの袋の中で子が順調に育っていて、これで再び復活し、賑やかな一家になる、とほくそえんでいた矢先のことです。裾野の広がりを大きく断ち切られる思いでした。
 幸い育った子は、メス。まだ復活の余地はあります。健康でいてさえくれれば、オグロワラビーのように「袋から落ちての事故」が非常に少ないだけに、確実に増えてくれます。今は、それをひたすら祈るだけになりました。
 何故、そんなちっぽけなワラビーに固執すると思われる方がいるかもしれません。もし、彼等三頭を失ってしまったとするなら、再び飼育することはまず不可能。それ程、彼等は貴重な動物となっているからです。
(松下憲行)

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