でっきぶらし(News Paper)

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44号(1985年04月)8ページ

アメリカバイソン=スカーレット 聞いて!!おじさんの「ドジ」を… 

鈴木和明
 皆さんこんにちは!!初めてだから自己紹介するね。私は昭和五十九年五月二十一日生まれのアメリカバイソンの末娘なの。名前は「スカーレット」かわいい名前でしょ!!美人のお姉さんがつけてくれたの。私とっても気に入っているんだ。ふつうは担当のおじさんがつけてくれるんだけど、どう言う訳か無精者で、私のお兄さん、お姉さん、それからおじさん、おばさんまで、ほとんど人にたのんでつけてもらっているんだって…。
 もっとも、あのおじさんじゃあセンスないから、つけてもらわなくてよかったけどね。「スカーレット」なんてかっこいい名前思いつくはずないもの!!
 ところで今日のお話は、その「おじさん」のことなんだけど、このおじさん「無精者」の上に「ドジ」なんだ。その「ドジ」な話をひとつ教えちゃうね。
 昨年の十月のある日、私とっても退屈してたの。お父さんやお母さんはだんだん遊んでくれなくなるし、こう言っては何だけど、あんまり広い運動場でもないし…。何か面白いことないかナァーって探していたの。
 そうしてよく見ると、運動場のスミにちょうど私しか乗れない程の足場があったの。そこにピョンと乗ったら、なんと後ろの石垣の上がもうすぐそばじゃない。これぐらいなら楽々外に出られるなあと思ったら、もうワクワク、ドキドキ。幸い誰も見ていないし「エイ」とひとっ飛びで石垣の上へ…。
 今まで下からしか見たことのないツツジの林の中に入って、まずこの中から散歩してやれと思いガサゴソゝ二往復ぐらいしたかな。その時「あっバイソンが出ている」と大きな声がした。あの声からすると、キリンを担当しているおじさんだろう。アーアーずいぶん早く見つかっちゃったナー。まだ、ツツジの林から出ていないのに。
 そうこうしている内に飼育係のおじさん達が集まって来て、周りを囲まれちゃった。しょうがないから、また石垣の上から飛び降りて運動場へ戻ったの。そうしたら、すぐに部屋に入れられちゃった。アーア、もう少し散歩したかったナァー!!この日は担当のおじさん、お休みでいなかったの…。
 次の日の朝、おじさんが出勤して来たかと思ったら、丸太と杭を運んで来たの。アレッ、もう昨日のことを誰かに聞いたな、あの丸太で出口をふさぐつもりだな、と思っていたら、外で話し声が聞こえる。よく聞いていると『あっちかな?こっちかな?』などと言っている。どうも私の出た場所が、どこか分からないみたいなの。ヒョッとしたらこれは…。
 しばらくして、おじさんは丸太をしばり終え私達を運動場に出してくれたの。私は一番初めに、おじさんが何処に丸太をしたか探したの。そうしたら「ヤッター!!」。案の定全然関係ない所にやってあるの。「おじさんの『ドジ』あそこじゃないよ」と、外でもう大丈夫だろうと満足顔で見ているおじさんに言っちゃった。でも、全然聞いていないの!!
 おじさんの見ている前でもう一度出てやろうかと思ったけど、すぐに出たんでは何かもったいない感じがして、その時はガマンしたの。それから一週間後、今度はおじさんがいる日に、しかも見ていない時を狙って、同じ場所からまた外に出たの。そして、おじさん以外の飼育係に見つかるように、しばらくして、私の計算通り他の人が見つけてくれて、また大騒ぎ。私も面白くて逃げ回ったけど、やっぱりすぐに囲まれてしまい、仕方なく運動場へ戻っちゃった。
 でも、おじさんが来ていないのよネー。何処でサボッているのかナー。確か放送でも呼んでいたのに。私の計算ではおじさんの慌てた顔が見られるはずだったのに、残念!!
 程無く飼育課長さんと二人でやって来て、「多分、あそこから出たよ」と私の出た所を指している。アーア、遂にばれたか、これで散歩もできなくなるナーと思っていたら、なんとおじさんは「いや、あそこは高いから出ないよ。出るとしたら、左端の低い所だよ」と、またまた全然関係のない所を指している。アレーまだ分かっていないのか、と内心ニヤリとしながら聞いていると、課長さんは「いや、あの右端に間違いないから、あそこに柵をしておいてくれ」そう言って行ってしまった。
 その後でも、おじさんはまだ腕組みをして考えている。「んー!!もうじれったいわネー。おじさんの『ドジ』私の方が我慢できなくなった、ついつい右端の唐ン台の上に、おじさんの見ている前で乗っちゃった。「アレー!!」だって…。やっと分かったみたい。ほんと、世話のやけるおじさん。
 皆さんも、今度バイソン舎の前を通ったら、一度後ろの石垣のほうを見て下さい。右端に竹が三本。これで私は外に出られなくなってしまったの。だけど、その他にも丸太が二本、真ん中と左端にやってあるの。こっちは全くおじさんの勘違いなのよネー。まだそのままになっているよ!!
 おじさんにしたら、こんな「ドジ」序の口なの。まだまだ“ドジ談”は、いっぱいあるんだから。でも、おじさんのメンツもあるし…。今日はこれぐらいにしておくね。
 続きは、また今度!!

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