でっきぶらし(News Paper)

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44号(1985年04月)10ページ

動物病院だより

 ヘビのあごがはずれたまま、はまらくなったって話を聞いたことがありますか!!
これは実際にあった話です。三月二十七日朝の見まわりでハ虫類館に行くと、担当の後藤飼育課員が、こまった顔をしていました。
 「どうしたの?」
 「ちょっとボア見てよ!!下あごがふくらんじゃって…」
 のぞいてみると、確かに下あごがふくらみ、上あごより前に出てしまっていました。
 「朝、ヒヨコを食べていたので、そのままにして、そうじをすませてのぞいて見たら、あんなふうになっちゃって…あごがはまんなくなっちゃったみたいだよ」
 こんな話あります?でも事実目の前のボアは、なんとか口をあわせたいって感じなのです。
 「さて、なんとかしなくっちゃ。下あごの脹れがひけば、どうにかもどるだろう」
と考えながら病院まで用具を取りに行き、治療開始!!
 後藤飼育課員にボアをしっかり持っていてもらい、下あごをさわってみました。ふくらんだ部分はフカフカと、まるで風船のようです。注射器で穿刺してみると空気としょう液が出てきて、少しづつしぼんでいき、十分ぐらいで、上と下の口先はほぼ同じ位置にもどり、かみ合わせができるようになりました。
 口腔内に泡がいっぱいたまっていましたから、そざや苦しかったことだろうと思います。翌日にはほとんどわからないくらいまでに回復し、これで一件落着となったわけです。
 ヘビやカメ、トカゲといったハ虫類は、病気もしないように思えますが、風邪もひくし、化膿もしやすく、状態が悪くなると脱皮がうまくできません。
 ボアの他に今月のハ虫類の患者さんは、エロンガーターリクガメが、眼の炎症、カゼ、下痢。バシリスクが左前肢を化膿。アゴヒゲトカゲが、寄生虫症、食欲不振とこんな具合です。
 獣医大学で、ハ虫類などの講義はありませんから、動物園に入って最初のころは、解剖しても臓器の形がかわっていて、わからずこまったものでした。トカゲなど腎臓が他のものと違って、骨盤の下にあるのですが、それがわからず、「あれ、腎臓がない!!」なんて!!この時期、おかげさまで?たて続けにトッケイヤモリが死亡したので、今ではしっかり把握しています。
 こうやってなんらかの形でハ虫類と接していると、トカゲの顔が妙に愛嬌があり、ヘビの小さな口がかわいく見えてくるから不思議です。
(八木智子)

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