でっきぶらし(News Paper)

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45号(1985年06月)3ページ

動物園の1年 後編 10月

トラの出産日本一・ベンガルヤマネコの死・ツチブタの来園他

 中秋を華やかせた話題といっていいでしょうか。トラの出産そのものはおかしくも珍しくもなくても、いよいよ無事に成長した頭数が日本一になるとなれば、こちらの気の入れ方も変わってきます。
 過去に36頭出産し、無事に育ったのは31頭(人工哺育の2例も含む)。そして今回の12度目、37頭の出産です。その子が無事に育てば、総出産の数はともかく、育った子の数としては日本一になるのだと言うのです。感慨も新たに湧いてきます。
 13年に渡って、カズ(メスの名前)は本当によく産み続けています。時には人工哺育にしなければならないことがあったものの、それもわずかに3回。ヒョウのように食べてしまう、なんてことはありませんでした。
 もうすぐそばに控えたトラ年。その年に向かって更に出産となれば、話題は一段とビッグなものになるでしょう。が、そろそろ老化も気になる年齢。無理をさせずにいつまでも元気な姿を、の気持ちも湧いてきます。カズは、開園以来の動物の数少ない1頭に入るのです。
 中華人民共和国より親善大使としてやってきたベンガルヤマネコのメスが、わずか2年余りの飼育年数で他界しました。調子が悪い、具合がどうも思わしくない、と聞いていましたが、それにしてもと思う程のあっけなさでした。(死因・石灰沈着症、胃出血)
 でも、何もしないでの死ではありませんでした。彼女はちゃんと子供を残してくれました。人工哺育で育てられた子も、彼女がしっかり育てた子も健在です。大使としての使命、更に追いたい繁殖の夢、それら全ては残された子らに託しましょう。
 新夜行性動物館にて、長らくオス1頭で飼育されていたツチブタにようやく連れ合いがやってきました。これで、うじ虫湧くやもめ暮らしに終止符。飼育する側には、繁殖への夢と期待が湧いてきます。
 もっとも、問題になったのはオスとメスの区別。分かりにくいと定評のあるところに、他園で飼育しているのは広島市安佐動物公園だけ。ひょっとしたらオス同士の不安もありました。後に「交尾を見たよ。」の担当者の弁。オス、メスの間違いはないようでした。
 この月、他に忘れてはならないのは、ふ化には至らなかったものの、コガタフラミンゴが産卵したことです。ベニイロやチリーフラミンゴに圧倒されながらよくぞ!偽らざる実感です。今年は、どうでしょう。
 出産関係では、アキシスジカが6頭目の出産。ベテランの母親となって、見事な育児ぶりを見せています。隣舎のパルマワラビーもようやく袋から顔を出して―。先細りの傾向に歯止めをかけてくれるでしょうか。

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