でっきぶらし(News Paper)

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46号(1985年08月)7ページ

良母愚母 第7回 ◎ハイイロキツネザル(今は昔、繁殖の夢)

 ゴサク(メスの名)がまた倒れた。最近よく耳にするニュースです。往年の面影は全くありません。かつてたて続けに繁殖したなんて全くウソのようです。
 もうかれこれ8〜9年前になるでしょうか。清水市に住んでおられる何人かの方より、非常に珍しいサル、ハイイロキツネザルの寄贈を受けました。かつての飼い主に、メスなのにオスと間違われていたゴサクも、その内の1頭です。
 ペア作りができてから、繁殖までの経過は短かったように思います。が、最初の子は上手に育てたのに、2度目は何が気に入らなかったのか、育児を放棄した為に、やむを得ず人工哺育に切り換えられました。
 これとて43g、コモンマーモセットに比べれば倍近くあるものの、育児の苦労は想像を絶するものがあったでしょう。チカコ、チカコと呼んで、担当者が可愛がっていたのが昨日のことのように思い出されます。
 それから数年の歳月を経て、けいれん発作をこのところ繰り返していると聞けば、悲しくなってきます。衰えは必ずやってくるとは言え、目の当たりにすると辛いものです。
 当園には、ゴサクの他にエルザというメスがいます。このメスも最近糖尿病になり、やせて、木につかまって歩くのがやっとという状態に陥ってしまいました。いろいろ調べたところ、どうやらパン、バナナといった高カロリーの餌に問題があったようです。また、聞けば非常に便秘を起こし易い体質のようで、シーズンを通じて低カロリーで繊維質の強いもの、例えば「メダケ」等を与えねばならないのに、冬場はどうしても途切れてしまうところに、苦労があったようです。習性や食性をつかむ、動物を飼育する上で一番大事なことですが、飼育例が少なければ少ない程、要するに珍獣であればある程、微妙なところをつかみ切れずに苦労します。そんな中で、ハイイロキツネザルをよくぞ繁殖にまで導いたと思います。
(松下憲行)

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