でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 50号の6ページへ50号の8ページへ »

50号(1986年04月)7ページ

動物園の一年(前編)◎八月 オランウータンの同居、ダオアナモンキー

一ヶ月余りの見合い期間を経て、オランウータン・ジュンとベリーの同居が可能に。これは、正に私みずからが関わったことですが、突き離そうにも突き離せず、体力も気力も消耗させられた見合い作業でした。
雄のジュンは、う余曲折を経ながらも自然保育で大きくなったのですが、雌のベリ−は全くの人工哺育でオランウータンとしての自覚がなかった為です。それを唐ワえると、予想以上に早く進行した、と思えなくもありません。
とはいえ、やや強引さが伴ってのことです。ベリー御自慢のふさふさした体毛は、あっという間にむしり取られ、またたく間にみすぼらしいオランウータンに変じてしまいました。体力の差、雄と雌の差等によってそんな風になってしまったのですが、何ともいえぬ憐れさを誘いました。
ひょっとしてと思ったのは二〜三ヶ月前、後はいつ生まれるかだけを案じていたダイアナモンキーの末娘が、五月にやっと出産。何といっても五才になったばかりの幼な妻であっただけに、万が一の人工哺育の恐れもありました。が、結果は取り越し苦労で、小さな体ながらしっかり子を抱き、乳をふくませて―。思わず声援したくなる程でした。
夏の暑い夜には、時として激しい雷雨が伴うことがあります。それが思わぬ事故を招くことも―。
朝の出勤時にいきなり獣医から呼び出しがあり、何事かと思えば、アクシスジカのフェンス激突事故です。昨年十月に生まれた子はすでに冷たくなっており、若雄の上唇は大きくめくりあがっていました。
激突したと思われるところのフェンスの柱は外に大きく傾いていました。原因は、昨夜の雷雨?誰も見ていた訳ではないので、百%そういい切れるものではありませんが、そう考えるのが常識でしょうし、草原獣にはしばしばこんな事故が起こることがあります。
この隣舎で飼育されていたオグロワラビーのビビが、ひっそりと息を引き取りました。
母親の袋より落ちて人工哺育に切り換えられたのは、ざっと六年程前です。以後、飼育係によくかわいがられ、馴致もゆき届いていて、成獣になってからは、有袋類の生態の妙をいかんなく披露。貴重な存在でもありました。
それが、最近よく咳をするようになったなあと思っている内にダウン。あっけない他界となりました。担当していた身からすれば、健康状態を見抜けなかった悔しさが残ります。
他、この月の出産はフルーツコウモリのみ。クロヒョウは奇型がでることが多く、出産は歓迎できぬとあって、避妊手術がほどこされました。

« 50号の6ページへ50号の8ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ