でっきぶらし(News Paper)

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52号(1986年07月)14ページ

動物園こぼればなし◎カラスめ!の季節

 オグロワラビーやパルマワラビーに餌を与えてしばらくして、餌箱のほうを見ると、カラスがワーッと群がってきて、ワラビーたちを蹴散らかさんばかりにしてリンゴやパンをついばんでいます。「こらあーっ」の大きなひと声で、一時は逃げはしますが、私が立ち去るのを薄笑いを浮かべるようにして木の上で待っています。
 冬場、少し早目に、まだ周囲に人気がない頃に餌を与えると、こんなことの繰り返しでした。でも、頭のいい彼らは、ちょっと変わったことをすればすぐに警戒します。時には欠点として表れるその小利口さを利用することを考えました。
 ワラビーたちは日の当るところで食べたかったようですが、ちょっとそれを我慢してもらうことに。多少狭苦しくて食べ辛いのではと思いましたが、小屋の中に餌を置くようにしたのです。
 単純な行為ですが、罠に対する怯えや警戒心がある限り、これは思いのほか有効に働きます。目のいい彼らのこと、私が何処に餌を置いたかは先刻承知しているはずです。なのに、小屋の外をうろうろするだけで、決して中に入ろうとはしませんでした。
 それでも、もう諦めただろう、鳴き声もしないからと、外で餌を与えるようにして2、3日もすれば、何処からともなくやってくる有様でした。全く目ざとい!
 それも寒さがきびしい内だけです。暖かくなるにしたがって、他にもっとおいしいものが見つかるからでしょう。次第に、パンやリンゴ、サツマイモ等のワラビーの餌に関心を示さなくなります。
 また来年もイタチごっこならぬカラスごっこでもやりますか。ここを担当している限り、カラスとは縁が切れそうにもありません。
(飼育課員 松下憲行)

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