でっきぶらし(News Paper)

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53号(1986年09月)1ページ

レンズから見た動物達「ファインダーから覗いたサル達」

飼育係が動物の写真を撮るというと、一般の方は毎日顔を合わせているので、そんなに苦労はないように思われるでしょうが、そうは問屋が卸してくれません。
草食獣の場合等は多少そのようなところがありますが、こと私の担当するモンキー等の場合は、むしろ逆に作用するようです。平常時とは違う行動を見せたりもします。
シロガオオマキザルの場合は、ボスが扉の取っ手をガタガタさせ、他の二頭のオスは、一番遠いところの止まり木のところへ行って木をたたきます。残る一頭のメスは地面のこれまた一番隅に引きこもって悲鳴をあげます。このように恐怖や威嚇の表情を示すばかりで、とても”絵”になるどころではありません。
ダイアナモンキー、これは撮影者が眼鏡をかけていると、オスに注意を浮?なければなりません。私ともうひとり、あっという間に眼鏡を盗られ、ひどい目にあっています。子供を抱いたメスにも苦労します。よくしたもので!?撮りにくいところへすぐに移動します。
ブラッザグェノン、これも子供を抱いたメスに苦労します。しつっこく狙うと観念して座り込むのですが、たいてい見せてくれるのは背中。それに好奇心の強い姉達が逆にレンズにかわるがわる覗き込んでくるので、シャッターチャンスは容易につかめません。
ニホンザル、レンズを意識して、見ないように見ないようにして止まり木を歩き回り、オスは小さいメスに八つ当たりして尻尾を引っ張ったりします。それに自らを奮い立たせる為か、尻尾をピンと立て胸を張ったりもします。婆さんザルと小さいメスは、もっぱら互いに毛づくろいし合って気持ちを落ちつかせているようです。
以上のように様々な行動を見せてくれますが、レンズを気にさせなくする妙薬は、実はあるのです。好物である木の枝葉を与えればいいのです。スムーズに撮れます。この辺は一般の方ではどうにもならないところで、飼育係の特権、有難さでしょう。
(池ヶ谷正志)

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