でっきぶらし(News Paper)

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55号(1987年02月)2ページ

動物園こぼればなし◎催眠術

マレーバクを御存知ですか。体毛は頭と四肢が黒く、灰白色の腹おびをしたように見える奇蹄目の仲間です。また彼等は夢を食べると言い伝えられています。
一見がんこそうに見える彼等の事ですから歩き始めるとそれは活発です。病気もありますが傷による化膿も又しばしばあります。そこで獣医さんのお世話になります。この時薬を使わず、私が催眠術をかけて治療を行なっています。
どのようにして催眠術をかけるのかですって?仲間達にも話しておりませんが、こっそりあなたにだけお教えしましょう。
先ず用意するものは、なんとデッキブラシ一本だけです。そのブラシを使って、腰背部や脇の下それから内股あたりをやさしくやさしくこすってやるのです。すると、だんだん腰に力が入らなくなり、すわりこみ、しまいには横になってしまいます。そうなったら直に治療に入ります。
最初は、もし突然おきあがると大変なことになると心配をしたものです。
獣医さんが化膿して膨らんでいる所を消毒し、メスで切って膿をしぼり出します。麻酔なしで、皮膚を切っても目を細め、じっとおとなしくしています。痛く感じないのでしょうか?
野生の動物はもちろんのこと、家畜やペットといえども、バクのように、簡単に治療は出来ないと思います。唯根気良く、何度も何度もくり返し訓練をすれば、不可能ではないと思いますが。
お判り頂けましたか、バクの催眠効果の抜群さ。治療が終り、ブラッシングを中止すると、ボーッとした顔で起きあがり、いつもと変わらぬ様子で歩き始めます。これなら薬の投与量の算定の心配もいらず、又薬の副作用も有りません。ただし甘え癖はついてしまいますが・・・
(飼育課員 小池秀晴)

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