でっきぶらし(News Paper)

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55号(1987年01月)3ページ

レンズから見た動物達【生気を抜いてしまった】

 世界最小のサルといえばピグミーマーモセット。ここ日本平動物園においても展示されるようになったのは、昨年十一月のことです。出産は思ったよりも早く一月七日にもうかわいい姿を見せてくれました。
 さっそく記録班の出番です。なにしろ生まれたばかりの子の様子は、記録の積み重ねの元として欠かせないことですから―。
 ちょうどその日は天候もよく、親子そろって放飼場に日光浴に出ててきいました。ですが、よく見ていてもどこにどう子がついているのか判りにくく、その内に子が動くのが少し見えたので、ようやく確認できたぐらいです。
 体はおとなの親指ぐらいで、しかも親と同じ黄褐色している為目立たず、親のお腹にぴったりくっついてしまうと、全く判らなくなってしまいます。親の背中のほうへ移動しようとした時ぐらいが精一杯のシャッターチャンスです。五〜六枚撮れたでしょうか。
 翌日、また撮ろうと行ったのですが、いくら探しても子の姿が見当たりません。担当者に聞くと、弱って体が冷えていたので人工哺育に切替えたものの、残念ながら死んでしまったとのことでした。
 昨日、写真に撮ったからだと飼育仲間にからかわれガックリ。いつもそうですが、写真に撮った動物が死ぬと、最後に撮った者のセイにされてしまうのです。生気を抜いたと―。しかし、ピグミーマーモセットの子の死んだ本当の原因は、親の乳がでなかったことのようでした。
(佐野一成)

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