写真を撮りに出かけても、「あの動物を親子で」とか「あの鳥を三羽一緒に」などと注文を受けていると、不安が先立ってしまい気が重くなってしまいます。ですが、逆にわくわくすることもけっこうあるのです。
　何といっても、動物の出産シーンです。そんなシーンを撮れるのは主に草食動物ですが、今までにキリン、ラクダ、バイソン、バーバリシープなどが記録できました。
　草食動物の赤坊は、他の動物と比べるとかなり大きく、出産する時の母親の苦労は、それは大変なものです。それだけに、近くで観察している私達もつい力が入ってしまいます。
　厳粛な生命誕生の一瞬ゝをカメラに収めながら「ガンバレ!!」と思わず声を出してしまう時があります。そして、その苦しみの末に無事生まれると「ホｯ」とすると同時に、何とも言われぬ感動を覚えます。
　しばらくして感動がさめてくると「アーｯしまった。ラストシーンの生まれ落ちる瞬間を撮るのを忘れていた。」あまりに夢中になり過ぎて、なんて事がよくある感激屋でドジなカメラマンの私です。
（鈴木和明）