でっきぶらし(News Paper)

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58号(1987年07月)8ページ

オグロワラビーふしぎふしぎ 松下憲行【ふしぎパート?W草食獣の筈なの

 彼らに与えられている飼料は、サツマイモ、ニンジン、キャベツ、リンゴ、パンを薄く切ったものに、草食獣用のペレット少々とフスマや微量の塩分、カルシウムを混ぜ合わせたものです。フスマは申すまでもなく、ビタミンやミネラルのバランスを保つ為。それと午後には、ニセアカシアやヤナギ、カシ等の木の葉も与えています。
「それだけで充分か」と問われれば、量さえしっかりあれば大丈夫、と答えることができます。理由は、良好な栄養状態と繁殖状況をあげることができるでしょう。元は二頭、それが今では八頭の賑やかさなのですから―。
 しかし、「それたけしか食べないのか」の問いには、いささか答えかねます。特に草食獣だから草や木の葉かそれの代用食になり得るものしか食べないのかの問いにです。
 「動物の食べ物」の中でも、カマキリを捕えて食べて食べてしまった話を述べましたが、その後も“動く物”に対して関心を示していると思われることが、時々ながらありました。
 食べはしませんでしたが、床に落ちたスズメのひなをバラバラにしたのは、その最たるものでしょう。口にしたもののおいしくない、結果として吐き出した、そのような痕跡でした。
 ならば、と思ってやったのは、セミを捕えて与えることでした。たいていの個体は薄気味悪がって逃げましたが、一匹だけ妙に関心を示す個体がいました。
 またしても“ヒロ”です。くんくんとにおいをかぐやいなや、パクッ。後は羽根一枚、足一本も残さず、きれいに食べてしまいました。
 食べるとも食べないともいえない結論。個体の嗜好による、というのが強く受けた印象でした。
 そんなことをした数日後、隣のパルマワラビ―舎のことですが、そこにいる若いメスが、カナブンを捕えて何をするのかと見ていると、いきなりガブッ。そして、ムシャムシャと食べ始めたのです。
 草食獣の面白くも不思議な嗜好。キリンがハトを食べたなんてのも、時折耳にする話だし、文献を広げると、昆虫を食べる草食獣の話は意外とあるものです。これからも、変わった仕草を見せた時は、注意深く見てみましょう。

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