でっきぶらし(News Paper)

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58号(1987年07月)11ページ

動物病院だより

 皆さん、夏バテなどしないで、快調な毎日をおすごしですか。
 今年はどうも人工哺育や人工育すうになる傾向があって、先号でもお知らせしたカリフォルニアアシカ、ピグミーマーモセット、アンデスコンドルの赤ちゃんに続いてチリーフラミンゴ、アクシスジカの赤ちゃんが、ただ今人工育すう、哺育中です。
 チリーフラミンゴのヒナは、卵を孵卵器に入れてふ化した個体で、フ化直後の体重は、七十五グラムでした。フラミンゴの卵は受精率が二十五パーセントぐらいだと言われていますから、一ケだけとってそれが受精卵で、それも無事フ化したのですからりっぱなものです。
 さてふ化したものの次に何を与えるかが問題となりました。親鳥がヒナに給餌しているところを御覧になったことがありますか。親鳥は「フラミンゴミルク」とよばれる液体を吐きもどし、ヒナに口移しで与えています。この液体はし赤い色をしています。(ヒナがピンク色になっていくと、親鳥の方は反対に体の色は白っぽくなっていってしまうのですヨ。)
 人工的にこの「フラミンゴミルク」をどうやってつくろうか…ありがたいことに、他の動物園ですでに何例かフラミンゴの人工育すうはおこなわれていたので、それらを参考にして作ることにしました。フラメンフード(固形飼料)、青のり、人参、青菜、リンゴ、オキアミ、卵黄をジューサーにかけ、人用粉ミルクとビタミン剤を混ぜてできあがり!!注射器の先に細い管をつけて、この特製ミルクを与えることにしました。
 最初、お互いに“コツ”がわからないので一回量が一〜五ccほどで一日三回のませました。回をかさねるごとにうまくなり、徐々に給餌量もふえてゆき、体重も二週間で百五十四グラム。一ヶ月目には四百六十グラムに成長し、餌も一回五十ccほど飲むようになりました。身体だけはフラミンゴではこまりますので、このヒナは、日中フラミンゴ池の一ヶ所にケージをおき、その中で生活しています。
 八月十二日にふ化したヒナは、親元で大きくなっています。二羽とも無事に成長してもらいたいものです。
さて、アクシスジカは、九月三日に生まれました。生まれた直後、メスがなめていたのでだいじょうぶと判断しました。ところが翌朝見にいくと子は、すわったまま立てず、体温がさがって動けない状態でした。この子はどうやらいつも産みっぱなしの娘の子だったようです。
 そこで直ちに病院に運び、赤外灯をつけて温め、ミルクを与えることにしました。ここでもどんなものを飲ませるかが問題となります。すぐに手に入るもの―ヒト用ミルク、牛乳、犬猫用ミルクets。考えた結果、犬猫用ミルクを半分の濃度で与えることにしました。
 ヒト用哺乳器の中にミルクを入れて飲ませるのですが、第一日目は流しこむだけ、二日目の昼頃から自分で吸うようになりました。さあ、これで第一関門突破!!次は下痢しないで、体重がのびていくことです。八日目に下痢をしましたが、その日だけで終わり、体重も三・二キロだったのが、一周間で三・六キロに増え、一安心。この次は、固形物(サツマイモ、ニンジン、木の葉、ペレットなど)をたべて、下痢しなければ、大成功となります。ただし、この個体がシカとして育ってくれるかどうかは…。
 この他に、ハ虫類館では、アカダイショウ、フロリダキングスネーク、ケニアスナボアがうまれています。小型サル舎では、八月三日にアカテタマリン、八月九日にムネアカタマリンがうまれています。
 暑かった夏から少しずつ秋の気配が感じられてきています。動物達もこれからが体調をくずしやすい時期です。皆さんも、充分身体に気をつけて下さいネ。
(八木智子)

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