でっきぶらし(News Paper)

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59号(1987年09月)1ページ

レンズから見た動物達「育児の狭間で・・・」

 アクシスシカとカリフォルニアアシカ、全く関係のない動物ですが、人工哺育と自然哺育が重なるという妙な共通点を持ちました。それらの比較を目の当たりにして感じたことを少々述べたいと思います。
 まずはアクシスシカの方ですが、母親が育てている方は1ヶ月、人工哺育の方は2ヶ月経過しています。その、母親についている方は1週間程で乾草を口にして遊ぶようになり、2週間もするとニセアカシアの葉をクチャクチャ 、今では親と同じようにペレットも食べ始めています。片や人口哺育の方、40日目にして離乳食をようやく少し食べ始めるようになったばかりです。
 体格はほとんど同じくらいに。つまりそれだけ追い上げられている訳です。活発さは倍以上の差。“母親育ち”はそれだけ強くたくましく感じられます。
 次はカリフォルニアアシカの方ですが、母親についている子は10日程で上手に泳ぎ始めました。もっともこれは比較になるどころか、人工哺育の子は、この頃は生死の境をさ迷っており、泳ぎを教わるどころではありませんでした。
 しかし、元気を回復してからも泳ぎの方はさっぱり駄目で、せいぜい下半身を池の中につける程度。“母親育ち”がスイスイ泳ぐのを見る度に情けなくなりました。やっとスムーズに泳げるようになったのは、100日も過ぎた頃でした。体格も活発さも歴然たる差がありあり、比べるのもうんざりするぐらいです。
 あらためて母親の素晴らしさ、偉大さを思い知らされます。母親がしっかりと育ててくれると、余分な苦労はしないで済み、なおかつ子は立派にたくましく育つのですから―。
 今回は、レンズではなく私の肉眼を通して見た動物達でした。あしからず。
(池ヶ谷正志)

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