でっきぶらし(News Paper)

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63号(1988年05月)7ページ

人工哺育抄(その?U)離乳への歩み◎クロキツネザル

 原猿だろうと類人猿だろうとサルはサル、ヒト用のミルクで簡単にとはいわないまでも、まあ普通に育てられる筈です。あえて違うものがあるとすれば、せいぜい哺乳する容器と量の差ぐらいのもの。
 ですが、今回のクロキツネザルの場合は今までのあらゆるケースと明らかに違っていました。まず、子を襲ったのは母親の哺乳放棄(前回参照)による体温低下のダメージです。ミルクを消化し得ないという強烈なショック。腸の粘膜がはく離した時などは本当に死ぬと思いました。でも医学の進歩とはありがたいもの。そういう場合には、経口リンゲルといっていいような薬(?)があるのです。溶かすと甘ずっぱい実にいい臭いがします。それを与えることによって腸への負担を和らげ、少なくとも最低限の体力維持を図ることができます。このクロキツネザル、獣医のそんな適切な処置がなければ間違いなくあの世へ行っていたでしょう。
 離乳は知らない間に進んでいたという感じですが、腸が普通の状態に戻っていればそうむつかしい作業ではありません。バナナから始めてニイモ、パン、ぶどう等、やわらかい物を順々に与えてゆくと、次第にリンゴ等の固い物も食べるようになります。
 今は何でもパクパク、67gだった体重も400g近くに。ただ発育時の体温低下のダメージはやはり相当に残るようで、かなり小粒になってしまっています。

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