でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 63号の7ページへ63号の9ページへ »

63号(1988年05月)8ページ

人工哺育抄(その?U)離乳への歩み◎コモン・ピグミーマーモセット

 俗にポケットモンキーといわれるサルの赤ん坊、小さいことこの上なく、生まれた時の体重はコモンマーモセットで25g内外、ピグミーマーモセットでは14g内外。でもサルはサル、ミルクはヒト用で充分です。
 違いがあるとすれば、量と哺乳時間です。ちょっぴりどころかうんと少なくて、哺乳器も特製なのをあつらえなくてはなりません。容器は注射器。それにビニールの細い管をつけるところがミソ。コモンで1〜2cc、ピグミーでは0.2cc〜0.3ccぐらいから開始です。小さいけれど思ったより丈夫にできている、というのが率直な感想です。生まれた時にすでに歯は何本か生えているのが、何よりもの証明でしょう。
 キヌザルにしろオマキザルにしろ、想像以上にたん白質の要求量は高い。経験を深めれば深めるほど強く抱かせます。これは1ヶ月もすれば始められる離乳作業にも、他のサルとは違う扱いとなって表れてきます。離乳の開始時期はともかく、一般のサルの場合だいたいバナナで始め、消化の良し悪しは考えても、たん白質にそう捕われないものです。が、コモンやピグミーとなるとそうは参りません。実際、離乳の第2弾としてバナナの味を覚えた頃に、ミルウォーム(飼育用昆虫)の蛹の体液をしぼって与えると、実においしそうにペチャペチャ舐めます。
 しかし今回、ピグミーマーモセットの1頭は失敗しました。前回、前々回の資料を参考に、生後1ヶ月ぐらい、体重は19から20gぐらいに達した頃を離乳開始の目安としていたのですが、1頭はまったくはかどりませんでした。バナナが駄目ならミルウォームがあるさと、順番を替えてみたのですが、結果としては完全な裏目、どろどろした体液は見た目以上に消化が悪く、後は坂道を転がるようでした。 
 生まれた時は全く同じ体重でありながら、離乳を始めた時に見せた消化力の違い。だがそれ以上に肝に命じなければならなかったのは、決してあせって離乳食の順番を間違えてはならないということです。
 現在はそんな離乳作業も終え、コモンもピグミーも元気に飛び回っています。彼らを見ながら、体力がないだけに日照、運動、栄養のバランスには絶えず気を配らねばならないことをつくづく痛感させられました。
 

« 63号の7ページへ63号の9ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ