でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 63号の8ページへ63号の10ページへ »

63号(1988年05月)9ページ

人工哺育抄(?U)離乳への歩み◎アクシスジカ

 ミルクの成分、質をある程度おおまかに分けるとすれば、食肉獣、霊長類、草食獣の3通りになるのではないでしょうか。その中で比較的うすくて(脂肪が少ない)、甘味(糖質)も少ないのが草食獣のミルクのように思います。
 その辺を考慮して、草食獣を人工哺育する場合は、食肉獣のミルクをうすめて与えます。割合に融通が利くもので、受け入れてくれればすんなりゆくものです。でも、上辺だけの感もなきにしもあらず。確かにうまくいった例もあります。が、アクシスジカの、特に前回の突然死を思うとやはり疑問は残ります。親についている奴に比べ、2倍、3倍のスローテンポだと担当者を嘆かせた離乳作業も終え、シカサンデーにもいわゆる“小鹿のバンビ”として参加、それなりの人気を得、役割を果たしていた直後に―。
 死因は、尿管狭窄―。尿管が異常に細かったといいます。それは個体の弱さからなのか、ミルクの成分の何かが不足して発育不良を招いた為なのか、知る由もありません。ですが、代用、代用が繰り返されていると、愚問と思いつつも胸に何かがわだかまる思いです。問い返されて「じゃあどうすればいいんだ。親の乳でもしぼれというのか。」とやられれば、下を向いてしまうだけですが―。
 もうひとつため息が出るのは、カモシカ辺りが保護されてきて哺乳する場合、結局ストレスも一緒に与えてしまうことです。こうなるともう乳成分もへったくれもありません。

 

« 63号の8ページへ63号の10ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ