でっきぶらし(News Paper)

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70号(1989年07月)11ページ

動物病院だより

 残暑きびしい毎日が続いておりますが、お変わりありませんか?体調をくずしやすい季節です。お互いに充分気をつけましょう。
 さて、この二ヶ月間をふりかえってみますと、なんといっても七月十七日、レッサーパンダの出産でした。当園では、今から六年前に三頭出産したことがあるのですが、この時は残念ながら二日後に死亡してしまいました。その後、なかなかうまくペアリングができず、昨年十月、長野の茶臼山動物園よりメスを繁殖のため借りてきたのです。
 レッサーパンダの発情はだいたい一月〜三月で、その間、オス、メスがなきあったり、臭いつけ(肛門周辺を木の枝になすりつけ、分泌物をつける。)を盛んにすると言われています。そして、今年この時期楽しみにしていたのですが、今までいたメスが、新しくしたメスをいじめてしまい、その反動で、このメスとオスがうまくいかなくなっていまいました。
 そこで今までのメスとオスを、放飼場でいっしょにし、夜は、新しいメスとオスとをいっしょにする方法でペアリングを行ないました。しかし、いずれもなきあっている様子はなく、たまたま二月二十一日と三月三日に今までのメスとの交尾が観察されました。
 このメスは七年前成獣で来園しましたから、もうかなりのおばあさん。出産予定日の六月中〜下旬をすぎでもその兆候は見られず、だめかと思いました。ただ、お腹が大きい感じがしていました。
 七月十七日朝、担当の長倉飼育課員より電話があり、「ユイユイ(メス)が巣箱に入りっぱなしだし、なんだかなき声がするみたい」とのこと。さっそくパンダ舎にかけつけて、二人でじーときいてみました。するとかすかに、「ピーピー」と声がするのです。前回、二日目に死亡、胃内はカラッポと、授乳していなかった感じがあるので、今回はとりあげて、人工哺育にきりかえることにしました。とりあげようとすると、メスがむかってきました。そんな状態でもなんとか、とりあげることができ、みると、親の姿とは全然似ていない、まっ白な、まるでシロクマの赤ちゃんって感じでした。
担当の長倉飼育課員は、待ちに待った赤ちゃんだけに、もう大喜び!!私もウキウキしつつ、さて、ミルクの準備。果たして飲んでくれるか、その不安が先にたちました。ミルクを与えてみると、こちらの心配をよそにしっかり吸ってくれ、ほっとしました。
その後、時々乳量が減って少々心配になりましたが、体重も順調にふえ、目もあき、歯も萠出し始めています。また体毛も、徐々に茶色になってきて、顔つきもパンダらしくなってきています。
 名前は、「キョンキョン」。まだオスかメスかわかりませんが、これからアイドルまちがいなし!!一度、いらしてみませんか?
(八木智子)

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