でっきぶらし(News Paper)

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71号(1989年09月)7ページ

動物病院だより

 日暮れが、やたらはやく感じ、夕方の見回りも、足早になっている今日この頃、皆さんお変わりありませんか?
 季節の変わり目は、とにかく体調をくずしやすいもの。チンパンジーのセディ君もとうとうかぜをひいてしまいました。セディのお兄ちゃんのリッキ―は、すぐ熱をだし、一時はゼーゼー、ヒューヒューと、呼吸が苦しそうなので、抗生剤の吸入もやったことがあります。それに比べて、セディは生まれてこの方病気らしい病気もせず、助かっていました。
 10月中旬頃から、セディ君、クシャミ、鼻水をだし、微熱といった症状がみられたので、赤ちゃん用のかぜ薬をのませました。2週間ほどで治り、今はまたあのヤンチャぶりを発揮しています。
 さて、この二ヶ月間のビックュースは、なんといっても「オオアリクイの出産」があります。前回の出産では、子の頭部打撲で死亡という残念な結果に終わってしまったので、今回は数?とも成功させなければ、と担当の後藤飼育課員は必死でした。
前回の死因を考えてみますに、オオアリクイは歯がない、その為臍帯を切るのに前足を使って切ろうとし、その時、壁に子の頭がぶつかってしまったと思われました。そこで、壁にゴムをはり、できるだけ、出産時に立ちあっていたいと、四時には出勤してみること27日間。端でみていて、疲れやしまいかと心配し、「ビタミン剤でも飲んでよ」と言わずにはいられませんでした。
 そして9月29日朝、最初は出産時の出血が前回に比べ多かったので心配でしたが、日増しに回復、毎週の体測で、子も順調に大きくなっているようでほっとしています。
 7月17日に生まれたレッサ―パンダの「キョンキョン」も、日増しにレッサ―パンダらしい体毛になってきて、子供動物園の人気者になっています。
話は変わりますが、皆さんは、お医者さん、歯医者さん好きですか?病院が好きというのはよほどそこのお医者さんが、技術的にうまいとか、人間的に好かれているんじゃないかと思います。私達は、「イヤだな」と思っても、熱があるから注射をうってもらって早く楽になりたい、いたいけどしようがまんしようと考えます。けれど、動物はそんなふうには思ってくれません。
 「あっ、この人が近づいてくる時は、イヤなことばかりするんだっけ!!」と、治療するつもりではないのに、私が近づくだけで、小屋から外へサァーといなくなってしまいます。たとえば、当園の中央付近にいるバーバリシープがそうです。何回か、治療の為に麻酔をかけているので、夕方、見回りにいき、小屋の中をのぞこうと近づいていくと必ず、さっとたちあがり、一目散で放飼場の方へ走っていってしまいます。
 ところが、担当者が、ちょっと怪我をしたというので、二日間代番をやったのです。一日目は、私をピッタリマーク、そうじ中に入り、右にいくと彼らは左へサァーといってしまい、餌をやってもすぐには食べに来ませんでした。二日目、少しずつ私との距離が近づき、餌をバケツから床においていく端から食べに来てくれました。そして、夕方の見回りの時、いつも通り小屋の中をのぞこうと近づいていっても、すわっている個体がいるようになりました。やっぱり、この方が気分はいいものです。できるだけ、治療する機会がないよう、好かれたままでいたい心境です。
(八木智子)

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