でっきぶらし(News Paper)

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71号(1989年09月)10ページ

一九八九年繁殖動物を追う(?U)小型サル編【コモンマーモセット(トレ

 サルには、いわゆる「お父さん」というのはいないのが常識です。チンパンジーのような人に近いサルでも、オス(ボス)に非常に子を可愛がりますが、父子関係については?です。
 ですが、です。マーモセット類はそんなことはありません。生まれた子が無事に育つかどうか、父親たるオスにかかる比重は大です。
 もし、背中に子がのっかている愛らしい親子の姿をみたら、それは七〜八割の確率で父子と思って下さい。哺乳するのは母親でも、ふだん子の面倒を見るのは父親の役割なのです。
 その父親が面倒を見るのを怠ったら、非常に下手だったら、いったいどうなってしまうでしょう。
 昨年三月の初産。これは明らかに哺乳がなくてやむを得ずの人工哺育でした。が、二度目は、父親の態度に?のつく人工哺育でした。三度目、今年の一月に生まれた子の人工哺育は、はっきり父親が無能をさらけ出してのものでした。
 子がなくと行くには行き、一応子を受け取りました。が、後の態度、対応がいけません。背中にのった子をうるさがるのです。
 で、どうするのかと思えば、フェンスに子をこすりつけて落としてしまったのです。一頭目は三日目に、もう一頭は十日目にと―。これでは、人工哺育にせざるを得ません。
 ここでの解決法は、思い切ってオスの入れ替えが考慮されました。次の出産が間近に迫った六月の初め、前のオスがいなくなってメスが寂しさを感じ始めていると思われる頃に、新たに来たオスとの同居を図りました。
 よそよそしさは、子が生まれてしばらく経った頃まで。「赤ちゃん貸してちょうだい」「あなたに任せるからしっかり面倒見てよ」そんな会話があったのでしょうか。以後は、誰が見たって完璧な父子、夫婦です。今年三度目の出産を間近に控えていますが、もう何の心配もいらないでしょう。

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