でっきぶらし(News Paper)

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71号(1989年09月)12ページ

一九八九年繁殖動物を追う(?U)小型サル編【ピグミーマーモセット(賑

 最初に生まれた赤ん坊のお腹に、どうしてミルクが入っていなかったのでしょう。数ある人工哺育の中で、ピグミーマーモセットの経過は特異です。つまり親の面倒見ではなく、母乳の出具合に主たる原因がありました。
 今考えるに、やはりストレスだったのかなあとそんな気がしてきます。小さな暗い箱に入れられて、さあ着いたと思えば、すっきり開放感のない検疫室。そこで少しばかり落ち着いたらと思ったら、小型サル舎へ移動です。
 そんなことが、一ヶ月ぐらいの間にバタバタと続きました。にも拘らず、妊娠したのは立派といえば立派ですが、百二〜三十gの体重にのしかかる重圧はいかがなものだったでしょう。
 人工哺育を三度繰り返したところで思い切って親に任せました。夫婦仲がよいだけでなく、面倒見のよい親でもありました。問題は、子がいつまでもミルクを探す仕草をするかしないかです。
 ふつうなら、一顧だにしない一挙一動までが気になりました。腰の辺りへ子が行くと、ミルクが出ていなくて、親につかまる力がなくなって来たのではないかと…。
 でも、そんな心配は無用でした。三日経ち、四日経ち、子はむしろ力強くなって行きました。ミルクは間違いなく出ています。
 そんな心配をして育った子(オス)もすっかりたくましくなり、今年の十月に生まれた子に非常に関心を示すようになりました・母親は抱いていない、父親のところには一頭しかいない、あれえおかしいなあと思ったら、若オスがしっかりおんぶしていました。立派、お父さんごっこです。
 小さくて、すぐに隠れてしまうこのミニザルも六頭になって、さすがに目立つようになりました。「キャー、ウッソォー、小ちゃいのにあんな小ちゃいのがのっかってる」よく聞くお客様の言葉です。

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