でっきぶらし(News Paper)

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73号(1990年01月)2ページ

アクシスジカを語る【ただいま七頭の大家族】

 今は七頭と賑やかな家族とはいえ、元は二頭。十一年前、まだ二才に満たないオスとメスのワンペアの飼育から始まりました。その元オスともいうべき父親は昨年の秋に死にましたが、母親を除く六頭は全て彼の“忘れ形見”です。
 そう、仲のいいペアで、毎年どころか二年に三回ぐらいのペースで出産。気がつくと、賑やかなファミリーを形成していました。
 面白い?ことに、その母親はちょくちょく日中に出産。それも、行楽シーズンの日曜日なんてこともありました。
 私が担当していた時にもあり、今回に負けず劣らず人の山が築かれました。何といっても、出産は最高に感激するシーンです。偶然に出会えたお客様、ついていると思われたことでしょう。
 不思議なのは、羊水でぬれた子の体は母親の舌べらで舐められれば簡単に取れて乾くのに、タオルやワラでふくといつまでもべたべたしていてなかなか乾きません。
 他園の方に聞いたのですが、母親には羊水を舐めずにはいられない習性があるとかで、それを手につけると一生懸命に舐め取ろうとするそうです。何かそこには、母子の絆の原点がありそうな気がします。
 こうして生まれた子は十三頭、全てが育ったことはあり得ません。自然界ではその半分すら育たないでしょう。容易にファミリーが形成されるのは、動物園でならばこそ。

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