でっきぶらし(News Paper)

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73号(1990年01月)6ページ

アクシスジカを語る【心もとない未来】

 初代のオス、メス(まだ生きている)が任務を全うしたとなれば、常識的に考えれば将来は安心です。気になるのは近親交配で、他の心配はふつうは生じません。しかし、ここには難問中の難問が…。
 母親は本当に立派です。子に細やかに愛情を注いで、私達にどれほどの感激と安堵感を与えてくれたことでしょう。今、良母のベストスリーをあげろといわれれば、ためらうことなく、その中に入る資格あり、と推挙します。
 で、その子らです。そんな立派な母親からどうして愚かな母親が生まれなければならないのでしょう。育つメス、育つメス、子を産んでも一観だにしません。
 キリンの徳子と全く同じです。自らも母親に育てられながらも、母親の育児を何度も学習しながら、いざ自分の番となると放棄。育児は他人がやるものと学習したのでしょうか。
 確か、三女だったでしょう。小さい内から子に関心を示し、母親に替わって自分の弟か妹かをよく舐める個体がいました。「うん、こいつは先のメスとは違うな。こいつは将来も馬鹿なことはしないんじゃないかな」と秘かに、期待。
 ところがある日、フェンスに激突して死亡です。原因は分かりません。小心な生き物ですから、何かに驚くと庶二無二突進する癖があります。目の前にどんな障害物があろうと…。
 「クソッたれ。手前らが死にゃあよかったんだ」と、内心本当にそう思いました。大いに将来を楽しみにしていただけに、力の抜けたことこの上なし。
 まだ面倒をよく見る母親に代わるメスが出たとは、一度も耳にしておりません。となれば、何とも心もとない将来。アクシスジカ、今の母親が死んだらどうなるのでしょう。
(松下憲行)

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