でっきぶらし(News Paper)

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73号(1990年01月)7ページ

あらかると【三月三日ピーチが生まれて】

 チンパンジーの代番として数年の才月を経ました。何かにつけ私を馬鹿にしていた彼らですが、昨年三月三日にパンジーがほぼ八年ぶりに出産してから、微妙な変化が…。
 主な接触といえば、室内ではヨーグルトを与えることと寝袋の出し入れ、外では木の細い枝を与えることぐらいです。が、その時の態度が違うのです。
 以前だとオスでボスでもあるポコは時として、オリに体当たりしたり、水を口にふくめてひっかけたり、木片を投げつけたり、等の行動をとりました。ヨーグルトを与えている時、隙を見計らってオリの間より手を出してひっかきにきたこともありました。
 それが、出産後には滅多にそんな態度をとらなくなったのです。せいぜい室内をうろうろ歩き回るか、オリにぶら下がって体をゆする程度ぐらいです。
 メスのデージーは、代番者にも従順で扱いやすい個体でした。が、ピーチと名付けられた子に私が触ろうとすると、オリの間から手を出して邪魔しにきます。
 何たって一番変わったのは、母親になったパンジー。頭が良くかつ気が強くて、ポコ以上に上手に頻繁に水をかけられ情けなくなる程だったのに…。
 顔を覚えてもらう内にだいぶ減る傾向にはありましたが、出産後は人ならぬ猿が変わったようにがらり。ヨーグルトを与える際、まず彼らのあいさつ行動である毛づくろい(グルーミング)をしてくれるようになりました。それが終わると、背を向けて自分にもとせがみます。
 パンジーの性格、角がとれて丸くなったようです。それが全体を落ちつかせて和やかにし、私をも包んでくれている感じです。
 ピーチが生まれて一年、私と三頭の間の暖衝材となってくれ、今のいい状態がいつまでもと願います。いじめられるのも、ケンカのとばっちりをくうのも、もう御免です。
(池ヶ谷正志)

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