でっきぶらし(News Paper)

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73号(1990年01月)8ページ

あらかると【張り合うシャンティー】

 皆さんがよく御存知のゾウは、野生ではメスがリーダーで群れを構成、何かが起こると助け合って生活しています。例えば、一頭のゾウが何かの拍子に深い穴とかに落ちて動けなくなった場合など、数頭が協力して引き上げたりする行動が見られます。
 当園のゾウも開園当初は小さく、ダンボが三才で体高は1.5mぐらい、シャンティーは一才で体高は1.1mぐらいと、体格の差ははっきりしていました。それが年下の者をかばう行動となって表れ、シャンティーのほうもダンボを頼りにしているようでした。
 当時は調教も毎日やり、日曜日には演芸として一日に二回お客様に見せていました。その為に、いろいろな“芸”を教えたりもしなければなりませんでした。
 ですが、なかなかできないものは手鉤(ゾウを扱う時に制御する道具)を使い、足とか耳の裏にかけて覚えさせたのです。が、これは相当に痛い為、小さいシャンティーは泣いて騒ぎました。
 そうすると、年上のダンボがすぐに走り寄ってきて、シャンティーと私達の間に入ってかばいました。しかし、逆にダンボを調教している時、泣こうが騒ごうがシャンティーは全く知らんふりでした。
 そんな風に小さなシャンティーをかばってきたダンボも、最近はちょっと違った行動を取るようになってきました。シャンティーも大きくなり、一見しただけではどちらがどちらか判らないぐらいになっています。
 ちなみに、ダンボの体高は1.52m、シャンティーのほうは1.51mで、その差はわずかに一cm。体重は逆にシャンティーのほうが二百kg重いのです。簡単に区別がつく筈がありません。
 それが、最近の行動を変えたのでしょう。放飼場で、竹などの餌を与えると、シャンティーにはやるまいと頭から体当たりするのです。又、お客様が時々投げる餌を素早く取られたりした時でも、同じように体当たりします。
 ドスッと、大きな音。シャンティーの体がよろけるぐらいですから、すごいものです。思わず、心の中で「そんな凄い体当たりは、私達にはしないでくれ」と願いました。
 シャンティーも負けてはいません。すれ違いざまに、ダンボを後足で蹴るのです。予知していないダンボは驚き次いで怒り、体当たりして返します。
 小さい時に見られた、年令の低い者を助ける行動はなくなり、意識は同等、対等になっているようです。それでも、何かに驚いた時などは二頭で寄りそって行動します。
(佐野一成)

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