でっきぶらし(News Paper)

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73号(1990年01月)10ページ

飼育係二十一年の思い出 秋元錠一【ラクダについて】

 動物は人間と同様に、病気にもなったり、互いの闘争で怪我をしたりします。人間と違い、動物はどこが悪いのか私達に教えてはくれません。ですから日常に観察が大変必要になってきます。ラクダに例をとれば、例えば排泄物についても餌を食べれば当然糞や尿をします。ラクダの場合、健康に糞は御存知のように、キリンやシカ同様、体が大きな動物なのに糞は非常に小さいですね。一粒一粒がちょうど豆の様ですね。あれが健康な時の糞なのです。お腹が悪くなりますと、それが二粒三粒と、量が増していき大きな塊りとなります。それをそのまま放置しておきますと、やがて軟便となり「牛の糞の様に」それが高じると、下痢便となり、健康体になるまで長引きます。もちろんそうなった時には獣医さんに連絡し、それ相当の措置をしていただきますが、薬はなかなか素直に飲んでくれません。ですから好きな餌の中に入れて飲ます方法を行なうのですが、最初の二口位は食べますが、後は薬の味を知り食べてくれません。そうなると薬の入っていない餌も採食してくれなくなります。
 そうなりますと、当然注射となるわけです。又これが大変で、獣医さんが動物に嫌われる第一歩です。なぜかと申しますと、最初のうちは、動物は何をされるのかわかりませんからおとなしくしておりますが、二〜三回、吹き矢で尻に注射されますと、あの長い筒をみただけで、獣医さんには尻を見せず必ず獣医さんと向き合います。人だって痛いのは嫌ですよネ。大好きなカシやシイの葉をとってきて気をこちらに向け、その瞬間注射します。
 これを長く続けると、もうだまされません。こうなると私や獣医さんはラクダ相手に根くらべとなります。
 全治しますともう二度とこの様なくり返しは嫌です。その為二〜三粒位糞の塊まりが出来ると急いでササやカシの葉などを与えます。そうすると五日位で健康体の時の糞に戻ります。ですから最初に申しました様に、観察をもとに積み上げた経験が大切なのです。

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