でっきぶらし(News Paper)

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73号(1990年01月)14ページ

動物病院だより

 一九九〇年代のスタートは、皆さんいかがだったでしょうか?世紀末ともなると、気候もおかしくなるのか、この二月の雨の日が多かったこと。晴れたのは、たったの四日間でした。ちょうど、ペンギンのヒナ達がかえっており、普通、この時期はとても乾燥しているので、巣穴も乾いているのですが、今年は雨続き、担当の鳥羽飼育課員と朝会うたびに「おはよう」の代わりに「また雨だネ」とあいさつしていました。
 雨が降ると、巣穴の中も湿って、糞や尿で臭うようになります。それに加えて暖冬。吐きもどしてヒナに与えている魚のカユ状物がこぼれ、ひどくなると、ハエが卵をうみつけて、不衛生そのものとなってしまいます。ですから、そんな環境ではヒナ達も病気になる率が高くなるので、湿気は禁物となってくるわけです。
 しかし、今年のように雨が降り続くと、もうあきらめというか開き直ってしまい、最後には「巣穴のすき間もふさいだし、こうなったら雨でも矢でも降って来い!!」なんてぼやいていました。
 そんな悪いコンディションの中でも、どうにかがんばってくれて、今現在三羽のヒナ達が大きくなっています。そして暖かい日には、灰茶色とでも表現しましょうか、その綿羽で包まれたヒナ達が、巣穴からでてきて、親鳥に餌をねだっている姿も見られるようになっています。あと一ペアも四月フ化する予定になっており、これがうまくゆけば、今年はなんと一度に五羽のヒナ達がそろうと、もうワクワクしています。(担当者は冷静なもので、「世の中そんなうまくはゆかないよ」なんて言っていますが…)
 さて、今年はうま年、ということで、昨年十二月二十八日にうまれたポニーの赤ちゃんは、大スターになりました。一月十四、十五日には、皆さんから名前を募集し、その結果オスの「マミー」、メスの「ポン」の間をとって「ポミー」と決定しました。このポミーはとてもやんちゃで、担当の清水飼育課員が放飼場で座っていると、背中や肩に乗ってきて「遊ぼう」と誘っているように思えます。清水飼育課員の話ですと、すでに発情がきて交尾し、ひょっとしたらうまくいったかもとのことですから、ポミーが、お兄さんになる日も近いかもしれません。
 夜行性動物館では、ツチブタの出産準備として、二月二十一日に、メスだけ展示室においておくことにし、オスを麻酔して、病院に収容しました。
 前回の出産は、一九八八年三月十日でした。この時に生まれた子が、皆さんも御存知の「カワイ」です。今は東山動植物園の夜行性館の「看板娘」になっています。「カワイ」の時の交尾は七月二、九日でした。
 今回は七月二十三日に確認しているのですが、はっきり言って妊娠そのものが断定できず、こまっています。普通、腹部が大きくなり乳房や陰部が大きく目立つようになりますからある程度、確定できるのですが、前回の時も今回も、乳房等の変化がなかなか見つけられず、果たして…と不安がつきまとっているのです。でも出産した事実はあるわけですので、今回もと、その準備を進めています。そして今回はなんとか親元で育ってほしいと考え、一月中旬頃より巣穴の改造をはかり、当日に備えてきました。これから先は、出産の瞬間に立ちあえ、状況把握ができれば良いなと思っています。どうなりますことやら…。
 キリン舎の方では、昨年十二月九日にオスが膀胱、尿道結石で死亡し、獣舎が、やたら広く感じられてしまいます。そこへきて、メスの徳子が左後肢をいため、続いて、左前肢も跛行するようになってしまいました。身体が大きいだけ、肢にかかり重さも相当なものだと思います。
 前回もお話ししましたように、キリンには麻酔がかけられませんから、検査をして、とか、手術をするということはできません。ですから今のところ、徳子は、部屋に入れたままにし、床にはワラを敷いて、安静をはかり、朝と夕方消炎剤を、噴射ビンに入れて患部にかけています。担当の佐野一成飼育課員は、「気の休まる時がなくてまいった!!」と。
 来月号は、うれしい話題だけ、お話できるようにしたいものです。
(八木智子)

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