でっきぶらし(News Paper)

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76号(1990年07月)3ページ

あらかると

★ずっこけ ワラビー

 ワラビーの子が袋から顔を出すのは愛らしい光景ですが、大変な時期でもあります。袋より落ちて戻れずに死んだり、やむを得ず人工哺育にしたり、の事態が度々生じています。今年は順調であと一頭残すのみとなり、もう大丈夫と思った矢先にアクシデントが…。
 昼頃こぼれ落ちているのを発見。袋の中に戻したものの、親は袋を閉じようとはしないので気になり、一時間毎にワラビー舎に足を運びました。
 仕事を終え、今日はこれが最後と夕方五時半に見に行った時のこと、放飼場に親はいるのですが、どうも袋の中に子がいる感じがしません。いやな予感は的中。寝部屋を覗くと隅のほうで転がっていました。
 運がいい。夜中に落ちていたらアウトだったでしょう。急いで獣医を呼び、袋の中に再び戻そうとしました。
 母親はよく人馴れしていて、簡単につかまえられるところまではいいのですが、子は入る気がなく、親は親で袋を広げません。やっとの思いで入れると、今度は袋を閉じようとはしません。
 「ホッチキスで入り口を閉めちゃおう」とヤケクソのジョークをとばすぐらい、子は袋に入れても落ち、獣医も私もバテバテになってしまいました。親も腰が立たなくなり、呼吸も荒くなりだしました。
 あと十日ぐらい袋の中で我慢してくれたらと思いながらも、これではもう無理。人工哺育にせざるを得なくなりました。
 今年のこの猛暑、子はこれ以上袋の中にいたら蒸し焼きになると思ったのか、はたまた親が袋の中に子がいては暑さに耐えられないと放り出したのかどうかは知りませんが、全く世話をやかせます。
 とにかくミルクを飲ませなくては…、せいせい飲んでくれないものの、まあ何とか無事に育っています。
                                          (池ヶ谷 正志)

★ゾウのいたずら

 ゾウは、あの器用な鼻を使って様々ないたずらをします。当園のダンボ、シャンティも相当なもので、互いに負けず劣らずのいたずら者です。
 あの鼻には筋肉の束が二万以上もが入っているので、ピーナッツぐらいのものまでつまんで食べたり、また投げたりもできるのです。この二頭のいたずらぶりを追ってゆくと…。
 朝、掃除しようと水道のコックをひねろうとしてもありません。さては例のいたずら、柵の間から鼻を出してコックをひねって水を出したりして遊んでいるうちに食べてしまった、と予測しました。
 二日目の朝、糞をつぶして探すとしっかり中から出てきました。これがキリンのように反芻する動物だったら胃にたまり、死に至ることもあります。
 室内の扉には、ゾウがだめにしないように釘のようにとがったビスが一面に打ちつけてあります。いつものように掃除していて、そのビスが毎日数本ずつなくなってゆくのに気付いて、あれ!?
 これはシャンティが、上下に動かして遊んで最後には折り取ってしまっていたのでした。鼻で動かしても取れないものに替えたところ、興味をなくしたのかさわらなくなりました。
 困るのは、お客様とか担当でない飼育係に泥水をかけたり、時には石を投げることです。汚されて服を買いに行かれた方、事務所に怒鳴り込まれた方、中には面白がる方、何かと話題を作る鼻です。
 中でも困ったと言うかひどかったのは、雨上がりでカメラを持ったお客様以外に誰もいない時、ゾウを撮ろうとしてカメラもろ共泥水をぶっかけられたことです。真っ青な顔をして「このカメラは百万もするんだ。どうしてくれる」と怒鳴り込まれ、平謝り。修理することで勘弁してもらいました。
 最近では、これはいたずらではありませんが、柵外の青々した草を食べようとして、柵に足をちょっとかけただけでつぶれてしまうことがありました。ゾウは大きく(共に三t以上)なり、柵は老朽化していたのです。
 大きくなったことを証明するかのように、今まで届かなかった電話の放送用の線を木の枝と一緒に引っ張ってきて、グシャグシャにしてしまったことがありました。
 これからも、暇を使っては何かいたずらできるものを探すのではないでしょうか。こちらもいたずらされても壊れないよう、またされないように知恵比べです。
                                           (佐野 一成)

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