でっきぶらし(News Paper)

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119号(1997年09月)8ページ

学芸員実習を振り返って

静岡大学教育学部 岩田朋子 高柳ゆり 逸見綾子
 まず、一番辛かったのは、朝が早かったことです。毎朝5時半起床で弁当を作り、そして7時半から実習が始まりました。夜はいつも疲れ果てていましたが、とても充実した毎日でした。
 仕事内容は、午前中は動物病院鳥類収容室の掃除と餌やりです。担当の人なら9時半頃には終えるそうですが、私たちはいつも11時過ぎまでかかっていました。あまりに遅いので、懸命に掃除をしているそばで鳥たちに騒がれ、餌を催促されてしまいます。その声を聞きながらあたふたと仕事をするわけですが、彼らの必死の様子を見ていると、なんだかかわいそうに思えてきました。元気ならば自分で餌を採って飛んでいるでしょうに、と。早く良くなることを祈るばかりです。
 午後には、展示物の制作や資料館の整理を行ないました。普段何気なく見ていた看板も、実際その行程に携わってみて、いろいろなことが見えてきました。配色の具合、子供の目の位置の考慮・・・・。ペンキ塗りや慣れない工具を使った肉体労働はとても大変でしたが、出来あがった時の満足感、そしてそれを来園者が楽しそうに利用している姿を見た時の嬉しさは、なんとも言えないものでした。しかし、実習中に作成・設置した、ふんに関する展示に対して母親が「汚いから」と子供をせかしたり、ダチョウの卵をいたずらで割られたりというハプニングにも遭い、どのようにしたら来園者により分かってもらえるのか、展示の難しさを痛感するとともに、新しい展示を考えてみたいとも思いました。
 そして午後の作業の最後は、猛禽類の餌とするためのヒヨコ殺しでした。初日は、怖さとかわいそうな思いとで、結局一番苦しむ半殺し状態にしてしまいました。毎日2羽ずつ殺していきましたが、この作業に慣れることはありませんでした。このことから、生物世界には、かわいがるだけでは済まない関係が存在するのだという、当たり前のことを再確認しました。
 今回の様々な体験の中で、自分なりに大事だと思い、学んだことは数多くありました。そして、自分がもし動物園の学芸員なら、野生動物の現状、「食べる」ということなど、来園者に伝えたいと思うことがたくさん出来ました。何を展示するかではなく、それで何を伝えたいのか、これは美術品や標本でも共通する、とても大切なことだと思います。
 動物園が、また学芸員が、何を伝えていくのか、何を伝えられるのか、今回の経験をもとに、これからの課題として考えていきたいと思います。

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