でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 112号の9ページへ112号の11ページへ »

112号(1996年07月)10ページ

あらかると 「新手のカラス退治」

 パソコン通信を始めて1年ほどになりますが、先日、動物園のホームパーティ(動物園の仲間が行なっているパソコン通信)の中で、新手のカラス退治が載っていました。
 「釣り糸(テグス)で輪を作っておいておくとカラスが寄ってこない。カラスは目がいいので、釣り糸を見つけ仕掛けがあると思い、寄ってこない」というものでした。これを読んで、「ああ、やっぱりそうだったのか」と思い出す出来事が・・・。
 というのは、以前ラクダを担当していた頃ですが、ラクダの背中(腰のあたり)をカラスがつつき、野球のボールが入るくらいの穴を開けたことがありました。追い浮チても、追い浮チても、カラスはしつっこくやって来て、決してやめようとはしませんでした。
 ラクダといえば、特に気にしている様子もなく、ただもぐもぐと反芻しているだけでした。意に介している風はありませんでした。
 だからといって、放置しておく訳にもゆきません。なんとかカラスを捕まえてやろうと考え、夕方にラクダを入舎させてから運動場の草の生えている部分に鯨の肉(当時は食肉獣には鯨の肉を使用していた)を置き、まずはカラスを餌付けました。
 2、3日ですぐ近くまで来て肉を持ってゆくようになったところで、周りにテグスの輪を作り、草で隠してカモフラージュしました。肉を取りに来たカラスが歩いているうちにテグスが絡んで逃げられなくなる、という計画でした。
 自分でもテグスがどこにあるのか分からないくらいうまく隠したのに、その日からぴたりと来なくなってしまいました。その後も一週間ほど続けたものの、肉は朝までそのままでした。
 その時は「失敗した」と思い諦めてしまいました。が、パソ通の「新手のカラス退治」を見て、あれは失敗ではなく、カラスを来させなくする意味では大成功だったのだと知るに至りました。
 今思えば、テグスをおいていたのは夕方から朝まででしたが、昼間も姿を見せていませんでした。そのテグスを置くのをやめれば、1週間もするとまた姿を見せるようになっていたのですから、効果は充分に上がっていたのです。
 カラスの知恵に追いつくのはいつの日でしょう。深く考えると、自らの浅知恵にトホホと情けなくなるのです。
(鈴木和明) 

« 112号の9ページへ112号の11ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ