114号(1996年11月)6ページ
動物を知る(?V)捕獲◎ノミの心臓 ニホンザル
サルを捕らえるのに愉快な気分などと言えば不謹慎ですが、思わず笑ってしまいたくなる態度を取るサルがいます。ニホンザルです。
喧嘩を売るのにこんなに楽な相手はいません。ちょっとにらみつけただけですぐにムキになってガッガッガオーです。集団でいればいるほどに強気に構えます。
でも、エテ公をからかうと面白いとしか思わないでいては、飼育係の気構えとして失格です。彼らはよく状況を判断し、序列をしっかり認識します。つまり、社会性の非常に強い動物なのです。
わずか4〜5頭のグループで飼育しても、序列はしっかりしています。よく観察していれば、互いの毛をつくろい合うグルーミングに思う以上に時間をかけているのがわかります。その恩恵に最もあずかるのは、やはりいちばん威張っているボスザルです。
体重は10kgを超え、そんなに威張っているヤツなら、捕らえるときはさぞや大変だろうと思われるでしょう。が、意外とそんなことはないものです。ヒントのひとつは、彼らの心臓は俗に言うノミの心臓だってことです。
グループの中にいる時を見て、その雰囲気だけを捉えて対峙した時を考えれば、どんな目に遭わされるかと思ってしまいます。でも、立場を替えてやれば、途端に意気地なしになってしまうものなのです。
つまりボスを1匹にして、こちらは複数で構えるのです。これで勝負ありです。心臓の更に小さいヤツになると、それだけでオシッコを漏らしせつなグソをぼたぼたとたらし始めます。
勢いに飲みこまれるようにしてしまうこと、それが彼らをつかまえるコツのひとつです。捕獲網でもってつかまえる前に、観念させてしまうってわけです。
冒頭で語ったように、10kgもあればすさまじい体力です。まともに対決すればとても押さえきれるものではありません。だから彼らの習性を頭において、心理作戦で臨むのです。これで双方共怪我をしないですみます。