でっきぶらし(News Paper)

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105号(1995年05月)5ページ

出産ふ化 それぞれの事情 「アンデスコンドル」

(親に任せる予定が狂って)
 成長のテンポがとにかくゆっくり、それがアンデスコンドルの特窒ネのかもしれません。メスを見てください。十才近くになろうとするのに、まだ成鳥の羽根の色が出切っていません。
 産卵したらしたで、その抱卵日数の長いこと。二ヶ月近くに及びます。ヒナがかえったらかえったで、その成長の遅いこと、他の鳥類の比ではありません。
 飼育下では、それらの要素が何かしらの問題を引き起こします。産卵しても、彼らに任せておいて大丈夫って訳にはゆかないケースも生じてしまうのです。
 昨年は、いったい何年ぶりの産卵だったでしょう。新たなメスを迎えてようやく産卵にこぎつけ、「やったあ」との思いに浸れました。が、その喜びも束の間、一ヶ月が経つか経たない内に破卵し、大きな期待は露と消え去りました。
 で、今年。考えられたのが、かつて用いられた方法の再現です。一卵目は取り、ふ卵器に入れ、二卵目を生んだ後、一卵目と二卵目をすり替えれば、抱卵期間が縮まりうまくゆくのではないか、です。かつてこの方法で親に育てさせた経緯があるのです。
 一卵目を取ると、期待通りに一ヶ月位後に二卵目を生んで抱卵に入りました。うまくいった、計算どおりとほくそ笑み、いつ卵をすり替えようかとの思惑を抱いていた最中、オスとメスは急に巣に戻ろうとしなくなりました。
 あちゃー。早々と自分たちが生んだ卵を割ってしまったのです。何が原因かは分かりませんが、こちらの狙いは根本からガタガタと崩れてゆきました。
 58日後の5月12日に、一卵目の卵がかえりました。思惑外れ、ふ卵器の中でです。これでは人工育雛、飼育係が育てるしかありません。複雑な心中を察してか、この成長の遅いヒナは飼育係をあまり煩わせずに育っています。

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