109号(1996年01月)12ページ
日本平の好記録・珍記録 〜 コンドル 〜
						(三宅隆)
 考えてみると、このシリーズでは1度も鳥類が登場していません。そこで、色々とデーターを掘り起こしてみると、このコンドルが目につきました。国内でも立派な繁殖成績だったのです。
 日本平では、開園後の1972年に、若いペアを導入し、狭いケージで飼育を開始しました。羽根を広げると両側についてしまうぐらいの小さなケージで、本当に気の毒だったのですが、いいペアにめぐまれた為か、1981年より産卵が見られました。ところがどうも抱卵があきっぽく、フ化まで2ヶ月位かかるのに、1ヶ月位で卵を割ってしまう事が続きました。そこで、1982年よりフ卵器で人工的にフ化させる事とし、この年、初めての繁殖に成功しました。
 しかし、何とか親に育てさせたいと一考を講じ、普通は年に1回しか生まない卵を、産卵後すぐに取ってしまうと1ヶ月後位に生み直すとうい習性を利用し、1986年に、最初の卵を取ってフ卵器に入れ、フ化予定日の少し前に抱いている2回目の卵とすり替えたのです。こうすれば、親は1ヶ月の抱卵ですむからです。この作戦は見事に成功し、無事に親の世話でヒナが育ったのです。フラミンゴ等でカラス害の為、擬卵と取り変え、フ化直前に入れ替える事等はよくありますが、こんな抱卵日の短縮の試みは、多分日本初ではなかったでしょうか。
 その後、最初のメスは1991年に死亡し、現在新しいメスと世代は代わっていますが、今までに自然、人工合わせて7羽ものヒナが育ち、日本国内のあちこちにもらわれていっており、中にはすでに繁殖に成功している個体もいて、この絶滅に瀕するコンドルの種の保存に一役かっているのです。
<コンドルの繁殖>
年度  産卵日 抱卵状況  結果    孵化日 性別 孵化日数 育雛状況
1981  04.05  自然        破卵38
1982  03.13  自然        破卵12
1982  04.29  人工        孵化      06.22   ♂     54日     人工成長
1983  04.20  人工        孵化      06.15   ♀     56日     人工成長
1984  05.03  人工        孵化      06.29   ♂     57日     人工死亡
1985  03.09  人工        孵化      05.10   ♂     62日     人工成長
1985  04.19  人工自然  中止卵
1986  04.10  人工自然  孵化      06.06   ♀     57日     自然成長
1986  05.09  人工自然  無精卵
1987  03.09  人工        無精卵
1987  04.19  人工        孵化      06.14   ♂     57日     人工成長
1988  05.14  自然        孵化      07.08   ♂     55日     自然成長
1989  04.19  自然        破卵41
1990  04.10  自然        無精?
1991  04.11  人工自然  無精卵
1991  05.15  人工        孵化      07.11   ♀     57日     人工死亡
1993  04.10  自然        破卵46
1994  03.25  自然        破卵35
1995  03.15  人工        孵化      05.12   ♀     58日     人工成長
1995  04.28  自然        破卵5					


