でっきぶらし(News Paper)

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153号(2003年05月)9ページ

病院だより おかあさんに成れるのは・いつ/海野隆至

 読者の皆様、日頃「でっきぶらし」ご愛読いただきありがとうございます。読者の皆さんのニーズにお答えすべく151号にてアンケート調査を行い御協力ありがとうございました。今回のアンケートでよせられた貴重なご意見を参考に、現在内容を再検討しております。飼育員による動物動物こぼれ話、裏話等はお陰様で要望が多く、これからも順次掲載したいと思います。それから、最新のニュースは読者の方々が読む頃にはかなり時間が経過してしまうため、先取りの話題を望んでいる方が多くいました。そこで、今後誕生が予想される動物、新たに来園、出園を計画している動物、園内事業、あまり皆さんが知る事が出来ない出来事を掲載していきたいと思います。また、飼育動物の殆どに愛称が付けられていますが、今後名付けの由来やそれらを含む個体ごとのエピソードも検討しております。

昨年に比べ、今年は多くの動物達の誕生が期待できそうです。
3月26日のジェフロイクモザルの誕生を皮切りにマレーバク(マレーバクは全国でも30数頭しか飼育されておらず、毎年繁殖も数頭のみ、ちなみに昨年は全国で2頭出産がありましたが、途中で死亡してしまいました。)今年当園での繁殖は大きな意味があります。コンドル、ニホンザル、ヤギ、アムールトラ(人工哺育中)カルフォルニアアシカ、タンチョウ、レッサーパンダ、そして7月9日にはオマハ市から親善大使として来園したピューマに待望の第二世が誕生しました。しかし、野生下で保護され人間に対する信頼感が今少し芽生えないうちの初めての出産、エリザベスにとってはまだ子育てをする環境が整っていないなどと、いろいろな要因が重複し、4頭の子供は日の目を見ることなく亡くなってしまいました。飼育担当者をはじめ職員全員が野生動物の飼育の難しさを痛感しました。何故なら、今回のように初めての出産、また、アムールトラのように何回か出産経験がある個体なのに子育(出産後子供に授乳ができるか否か)てが上手くできない母親が出産した場合、子供達を取り上げ人工哺育に切り替えれば子供達は助かる確立が高いのですが・・・?この見極めが苦難、と言うのも人工保育した野生動物はペットや家畜と違い、親元で自然に育った個体と違い群での挨拶の仕方や生活を知りません。将来それら野生個体と一緒に飼育すると、大けがをしたり、最悪の場合一瞬のうちに死に至ることが有ります。何故なら、姿形は自分達と同じように目に映るが仲間として認識されていないのです。人間社会で言えば感情を持たない人造人間のような者かも知れません。例え、人工哺育の個体が大人になり出産を迎えても自分が親から学ぶべき子育て、社会生活のルールなどを知りません。このように人工哺育にすることは、本来の野生動物の本能を途中で断ってしまうことになるのです。果たしてこれはその子にとって良いことなのでしょうか・・・?。
このため子育てを経験していない母親に、本来潜在している母親としての本能が何とか芽生えてもらいたく、子供達が母親の乳房にたどり着くのを一心に願い「断腸の思い」で見守るしか有りません。今回のピューマもその一例でした。また、このためにも安心して子育てができる環境を作ることが我々飼育員の役目なのです。

アムールトラの「ナナ」は今回で4回目の出産でしたが、初産の時は自分の体から子供が生まれたことは認識しているようでしたが、さて、どうしたらよいのか?。産室をウロウロするばかり。あまり「ギャーギャー」鳴くのでお腹をくわえて遠くに移してしまう。見るに見かねて取り上げ人工保育に切り替えたが、くわえ方が悪かったため、肺などからの出血がひどくやがて死亡。しかし今回は、くわえ方も頸部をそっとくわえるなどかなり上達しもう一歩のところまできました。次回はきっと素敵な母親になれるでしょう。

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