でっきぶらし(News Paper)

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145号(2002年01月)6ページ

友の会コーナー 最近の日本の動物園

 最近の新しくつくられた動物園やリニューアルされた動物園は「種の保存」を重視しています。

 現在多くの動物はワシントン条約によって売買の制限をされています。数少なくなってしまった野生動物を捕まえて展示することは出来ません。そこで、動物園で繁殖させる訳です。以前は一つの動物園内での繁殖でしたが、同じペア同志の繁殖では血縁が濃くなってしまう為、今では他の動物園と協力しています。それぞれの動物各個体を登録して、その親がどこの動物園の個体で、又、その親はどこの動物園の個体といった風に調べていきます。つまり家系図をつくる訳です。繁殖の為ペアにする際、家系図を調べ血縁関係の薄い個体を選びます。

 例として、上野動物園のゴリラを説明します。野生のゴリラはオス一に対しメス複数そしてその子供達といった群で生活しています。そこで繁殖が可能と思われるメスを数頭集め一緒に生活させます。次に群のリーダーとなるオスを一緒にします。国内にいるオスより候補を選び、メスと同居させるのですが、これにはちょっと問題があったそうです。野生では群で生活しているゴリラですが、ほとんどの動物園では一頭または二〜三頭で飼育しています。その為、候補にあがったオスを同居させても群生活を知らず、メス達に攻撃されてしまいました。この個体「ビジュ」は群で生活していたので、上野動物園に来てもメス達とうまく生活していきました。その後「モモコ」というメスが妊娠し、「モモタロウ」というオスが生まれました。ちなみに日本平動物園からも「トト」がお嫁入りしました。上野に行った当初は地面に下りることが出来ない等のニュースも流れましたが、なんとか馴染んでいます。「ビジュ」とも仲良く生活していたのですが突然、「ビジュ」が死んでしまいました。吐いた物を咽に詰まらせたのが原因だそうです。その後、上野には国内より新たなオスが来ました。

 最近では、繁殖のためによその動物園から動物を購入することは少なくなりました。「ブリーディングローン」と言って繁殖のための貸借となります。この際、子供が生まれたら契約によって、どっちの動物園に権利があるか決まっています。

 最近、ちょっと変わったことがありました。通常は前述のように動物の貸借か交換なのですが、卵の交換と言うことがありました。フンボルトペンギンですが、日本平動物園でも毎年繁殖しています。しかし、血縁関係が濃くなるた為、愛知県の豊橋動物園との交換になりました。一見、卵の交換だから簡単に思えるかもしれませんが実際には大変です。まず、近い日に生まれた卵にしなくてはなりません。次に親の目を盗んで偽卵(作り物の卵)に交換して相手の動物園に持っていく訳ですが、卵が死なないように保温をしなければなりません。そして偽卵と交換して卵がかえる訳です。親に卵を抱かせず人工孵化という方法もありますが、人工飼育は後々繁殖に問題があるので、必要と思われる時以外はしません。今、ペンギンの池の中には、豊橋動物園の卵よりかえった子供もいます。

 「種の保存」というものは、動物がストレスを感じにくいよう緑を沢山植えたりする環境づくりから始まり、繁殖へとつながります。草木ばかりで動物が見にくいという所もありますが、動物に取っては必要な物です。

 日本平動物園にも他園に負けない動物がいます。園内にも何種類かは繁殖賞をもらっていますが、中でもオオアリクイはすごいです。地味で目立たない動物ですが、他園ではあまり繁殖していません。国内で一番繁殖しています。

 今後の動物園はさらに「種の保存」を意識したものとなって行くでしょう。そのことを知ったうえで動物を見ていくと、また違って見えると思います。

(土屋 博之)

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