でっきぶらし(News Paper)

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167号(2005年09月)5ページ

ショウジョウトキの珍行動

 キリンの向かい側にあるフライングケージには、15種類、約50羽の鳥達がいます。その中でもひときわ目立つ鳥が、全身が朱色のショウジョウトキです。現在、ショウジョウトキは14羽いますが、そのうちの1羽がなんとも不思議な行動をしたのでそのお話しをします。

 それは、1羽のオスが9月20日頃よりフライングケージの片隅の小枝を集めて簡単な巣を作ったのです。「なーんだ、鳥が巣を作るのは当たり前のことじゃないか」と思われるかと思いますが、実はここからが「珍行動」なのです。普通は、巣を作ったらメスが卵を産んで温めてヒナをかえすのですが、このオスは、なんと卵ならぬ「石」を自ら温め始めたのです。

 ショウジョウトキは樹上に巣を作るのが一般的なのに、このオスは地面に巣を作り、しかも石を卵の代わりに抱くなんて、なんとも摩訶不思議な行動だらけです。また、温めている石は丸みのある4cmくらいの小石で、数は4個もあり、そのうちの1個は色が白くてパッと見では、本当の卵があるかのようにも見えました。

このオスは、たった1羽で雨の日も風の日も一日中「石」を温めていました。すぐにその卵ならぬ「石」を取り除いていてしまうのもなんだか気が引けたで、しばらく様子を見ることにしました。さすがにエサを食べるときは巣を離れますが、少し食べるとすぐに巣に戻り、再び石を温めるのです。そのけなげで一生懸命な姿を見ていると、なんとも切なくなる思いになりました。

獣医や他の飼育員とも「なぜ、このような行動をするのだろう?」といろいろと話し合ってみましたが、おそらく、初夏の繁殖期にペアになれなかったオスが秋になって一人?(1羽)寂しく繁殖のまねごとしたのではないかと推 測するのみで、はっきりと した理由は分かりませんでした。

ちなみにこの行動があまりにも変わったというか、珍しいので、新聞社やテレビ局にも取材していただきニュースとして取り上げて もらった程です。
そして、月日も経ち11月に 入り朝晩が冷え込むようになると、このオスもさすが にかえらぬ卵(石ですが) に肝を冷やしたのか、だんだんあきらめ始めたようで巣にいる時間が短くなって きました。そこで本人には 悪いなぁと思いましたが、このオスの体力のことも考えて11月14日に石を撤去しました。しかし、撤去して間もなくは、空となった巣に戻ってきては卵を抱くようなしぐさが見られたりもしました。

 その後は、さすがにあきらめたようで巣に戻ることはなくなり、今では仲間たちと行動を共にして元の生活に戻っています。

 秋の哀愁漂うショウジョウトキの珍行動ものがたりでした。

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