でっきぶらし(News Paper)

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172号(2006年10月)4ページ

至らぬ飼育係で

オランウータンのジュン(オス)とキャンディ(メス)の同居に先立ち、ジュンの爪を切りました。切った後痛痒いのか、指をしゃぶる程深爪に切りました。それというのも握力がものすごいからです。 

同居の時、ジュンは入室するとすぐキャンディをすごい勢いで捕まえにかかり、キャンディはそれを怖がり逃げようとします。ジュンは捕まえ離すまいとしますが、キャンディはもがいて逃げ出そうとし、その時ジュンの爪が伸びているとナイフで切ったような大きなケガにつながってしまうのです。
 
ジュンもあせらず、キャンディがそばを通りかかったらちょこっと体を触るとかそのあたりから始めればよいものを、女性の扱いを知らないなあ・・・(まあ、私もジュンにああしろこうしろと言える程の技量もありませんが)。

それはさておき、8月からまた同居を始めました。ジュンは案の定捕まえに行き、過去何回かの同居の学習をうち忘れキャンディを怖がらせてしまいました。深爪の効果もあり、そう大きな傷にはなりませんでしたが、出血もあったので、塗り薬をつけようと、同居後にキャンディの部屋に入室しました。

「キャンディ」と呼びましたが、ショックもあり天井から降りてきません。そこで、薬の入ったチューブを見せ、「これ塗りたいから」と何度か指さすと傷のできた足を伸ばしてきたので無事塗ることができました。過去に傷を治療した時にそのチューブを見ていたので、覚えていて反応したのでしょう。 

数日後、今度は腕の関節あたりを負傷してしまいました。入室し塗り薬を指先にのせ、あいている手で毛をかき分け探してもなかなか傷を発見する事ができません。するとその様子を見るに見かねたのかキャンディは、唇と手で毛をかき分け「ここにあるでしょう」みたいな感じで傷の場所を見せてくれ、無事薬を塗ることができました。

本当にグズでノロマな至らぬ飼育員でごめんなさい。こういうことに懲りず見捨てないで、末永いおつきあいをお願いします。

(池ヶ谷 正志)

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