でっきぶらし(News Paper)

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179号(2007年12月)10ページ

クマ舎の移り変わり

 秋も深まり、木々も色づき、紅葉も見頃となってきました。・・・待て待て、動物園のケヤキは赤くなってきたが、モミジやイチョウはまだまだ緑のまま、これっておかしくないかい?いつもだと山全体が赤や黄色に染まっていて園全体が美しいモミジとなるのに、今年は特におかしい。もうすぐ木枯らしが吹く時期なのに、これも温暖化のせいなのかな?
 皆さんが来園して、園内を順路に従ってぐるっと廻ってくると、猛禽類の隣にクマ舎が目にとまります。ここの管理人(去年は代番、今年から担当)から、小声で言っているボヤキを聞いてみましょう。「ここは動物園開園以来の建物(築約40年)で、なかなか年季の入った物件。それなりに壁にはヒビ割れがあり、雨が降るとあちらこちらから水滴がポタリポタリと落ちてくるし、夏はコンクリートが焼けて大変暑く、冬には隙間風が吹き込み日も差さなくて寒い。おまけにキーパー通路は薄暗く、ツキノワグマがどこにいるか目をこらさないとよく見えないという代物。今まで数多くの動物がここに移住し、たくさんの泣き笑いを演じた所なんだけどなあ。なんとか良くならないかなあ。」
 昨年の夏前までは、ブチハイエナ(メス1、オス2)、ニッポンツキノワグマ(メス2、オス1)、ホッキョクグマ(メス1・・・なぜか皆さんが「白くま」と言います。某電機メーカーのエアコンのCMで知れ渡ったのでしょうか?)が生活していて、飼育担当は餌、掃除、放飼場への出し入れなどに明け暮れていました。
 ところが、古くなった獣舎を改修するため、ふって湧いたように急にハイエナの夫婦とツキノワグマが他の動物園に行き、残ったのはホッキョクグマのピンキーのみ。淋しい生活がしばらく続きました。今年に入るとすぐに工事が始まり、3月にはピンキーも食が落ちてきて獣医さんのお世話になりました。あの体格、薬の量もはんぱではありません。流動食まで登場して、あの手この手でなんとか普通の状態まで回復することができました。
 工事も終わり、表側はコンクリートにのぞき窓、寝部屋には文明のリキ、エアコンも付き、通路側のくたびれたガラスはアルミサッシへと替わり、これで夏も涼しく暮らしやすくなったと思った矢先、またしてもピンキーの調子がおかしくなってしまいました。なかなかプールに入ろうとせず、大好きな煮イモをプールに投げ入れても足首までしか入らない、どうしたんだろう???また、薬のお世話にあいなりました。後はご存じのとおりです(詳しくはでっきぶらし176号をご覧下さい)。これにより、この建屋に住人がいなくなってしまい、本当に寂しい限りでした。
 しかし、リニューアルした獣舎をいつまでも空けておくのは忍びないので、猛獣舎に仮住まいしていたハイエナのツキ(オス)を戻しました。両親がいなくなって一人で淋しそうなツキは、人が見える上ばかり見上げていて、飼育担当が通ると嬉しそうに駆け回っていますが、なかなか美味しいものは降ってこないとうらめしそうな顔をすることも。
 この獣舎もあと3〜4年位もたてば新しく建て直す予定があるので期待しています。早く新しい住人が来て、皆さんに見てもらえるようになってほしいと思っている今日この頃です。
               (田地川 恭仁)

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