でっきぶらし(News Paper)

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192号(2010年02月)5ページ

≪病院だより≫カゴの中の鳥達

動物病院には1階と2階に入院室があります。1階は哺乳類、2階は鳥類の入院室です。実は、動物園の動物病院は県からの依頼を受けて野生傷病鳥獣保護センターとしての役割も担っています。

交通事故にあったタヌキ、翼を骨折したフクロウ・・毎日、あちこちからいろいろな病気やケガをした動物が運ばれ、年間600頭程になります。大半を鳥類が占め、初夏のヒナが巣立つ頃の育すう室はピーピー、パタパタ、満室にも関わらず入院患者がやってきます。

こうして入院してくる動物達の中には、みなさんが保護をする場合以外にも、市や県、警察署の担当者が困った末動物園を頼るという場合も含まれます。その一つに、「違法飼育の摘発」ということがあります。

メジロ、オオルリ、コマドリ、ウグイス、ヤマガラなど小さな野鳥は美しい鳴き声や羽の色に魅力を感じてか、違法にこっそり飼育する人がいるのです。それも一人で大量に。これらが摘発され、動物病院に保護されてきます。

すると、2階の入院室は小鳥達の小さな鳥かごがズラーッと室内中に並びます。縄張り意識や一羽ずつをケアするために、一羽ずつカゴに入れます。すり餌、水、細かく切ったフルーツを小さな容器に何十個も用意し、掃除をし、園内の入院動物達の世話もしながら、いつ、どれくらいやってくるかわからない動物の受け入れと世話をする病院飼育員は本当に息つく間もなく大忙しです。

連れてこられた小鳥達を見て、「こんな風にして飼っていて何が楽しいんだろう?」怒りと疑問があふれます。飛んで逃げないように羽を切ってあったり、カゴの中で暴れて羽が傷ついていたり、羽づやも悪く、床から止まり木までの高さになったフンの山ができていたり。これでは、鳴き声も美しさもまったく味わえません。思いをグッとこらえ、飼育員はすぐに掃除を始めます。

自然の中で羽ばたく小鳥が一度捕まり、小さな鳥かごに入れられてしまえば、飛ぶために発達した鳥の胸筋はすぐに衰えます。カゴの中で羽ばたいているからといって、その場で放してもすぐに力つきてしまうでしょう。

衰弱や羽の状態によって、治療やリハビリをして放す必要があります。また、オオルリなど渡りをする鳥は、本来すでに暖かい地域へ渡っています。日本の冬の中放すことは命取りです。鳥の種類によっては自然へ帰せる季節があるのです。自然に帰すことができずに動物病院で一生過ごすことを余儀なくされる鳥も多いです。

あたり前ですが野生動物はペットではありませんよね。きれいな鳴き声も姿も自然の中で目にするからこそだと思います。保護された動物達を日々診ていると考えるさせられることが多いですが、現状をみなさんにお伝えすることで何か一歩につながるだろうか?と考えるこの頃です。
(長倉 綾子)

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