でっきぶらし(News Paper)

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196号(2010年10月)5ページ

≪病院だより≫満員です

 暑かった今年の夏もようやく終わり、秋らしい過ごしやすい季節になってきました。「満員です」といっても動物園のことではありません。確かに今年は、猛獣館299のオープンもあって、多くのお客さんに動物園に足を運んで頂いているのですが、満員と言うのは動物病院のことです。
 そこで今回は動物病院の住人たちを紹介したいと思います。
 まずは前回のお話にあった人工保育のエリマキキツネザル。この子供達も日増しに体が大きくなってきたので、ケージから、運動出来るようにロープをぶら下げた三畳ほどの部屋に移しました。最初はこわごわしていましたが、今ではロープにぶらさがったり、飛び移ったり、活発に動き回っています。サル達と一緒の部屋の中で掃除をすると、人の肩や頭に乗ってきて、まとわりついてきて掃除が出来ません。隣の部屋に移そうとしても、一頭運んで移しても二頭目を運んで移す時に一頭目が出てきてしまいます。パンをミルクに浸してお粥状にしたものなどの食べ物で釣ってやると、一頭は食欲に忠実で隣の部屋に移ってくれます。しかし、もう一頭は餌に釣られたり、釣られなかったりで、部屋を移らない場合は手で運ぶことになります。二頭の性格の違いというか、自立の度合いが目に見えて面白いです。その餌が食べ終わると、「なにやってんの?」と言う感じで、部屋の仕切りの網にくっついて、こちらを見ています。まだ大人のエリマキキツネザルのような叫び声はできませんが、時々「カッ、カッ、カッ」と鳴いて、日増しにキツネザルらしくなってきました。それでもまだ、部屋の扉の前に立つと、「フン、フン」と言いながら、すぐにこちらに寄ってきます。
 次の住人はオグロワラビーのメスです。中型サル舎、類人猿舎前の芝生広場の近くのワラビー舎にオス1頭、メス1頭で飼育していましたが、以前からメスが右脚を地面から浮かしていて、ワラビー舎で投薬などを行っていました。しかし、状態があまり良くならないので、入院して色々検査して、そのまま静養して貰おうということになりました。レントゲン写真を撮って、血液検査などを行うと、レントゲンで右膝の上の骨に異常が見られました。血液検査でも骨に病変がある場合に上昇する項目で測定不能という位の高い数値が出てしまいました。そのような状態に効果があると思われる薬を続けたところ、足の運び方も少しずつ良くなり、血液検査の数値も徐々に下がってきているので、また機会を見て検査しようと思っています。
 あと夜行性館で展示しているスローロリスのメスも病院の住人です。どうもオスに咬まれたようで、右のお尻に大きな傷が出来ていました。そこで病院に持ち帰り、傷口を縫って、エリザベスカラーを装着して入院しました。エリザベスカラーとは犬や猫が着けているのを見たことがあるかもしれませんが、傷口をなめることで傷を悪くさせないように、首の回りにプラスチックなどでラッパのような形を作って、口先が患部に届かないように装着するものです。入院後しばらくは餌もほとんど食べず、ケージのはじっこに丸まって、うずくまり、ストライキを起こしていました。餌も食べないので、投薬は注射に頼るかしかありませんでしたが、徐々に環境に慣れてきたのか、好みの餌は良く食べるようになり、飲み薬に変更しました。しかし、エリザベスカラーがずれたりして傷口を舐めてしまうことが出てきて、筋肉が結構えぐれてしまったような状態になってしまいました。そこでエリザベスカラーを改良して、患部もおしっことうんちは出来るような形で、テーピングでぐるぐる巻きに保護しました。時々テーピングを交換していますが、傷口の状態を見ると、徐々に肉が盛り上がってきました。餌食いも良くなってきていますが、今でも朝病院に来るとタオルの上で丸まってうずくまっていることも多く、掃除を始めると「うるさいなぁ」と言う感じで、ゆっくりとケージの網を登って、掃除が終わるのを待っています。ただ、気分の良い時(?)は朝からケージの網に登っていることも時々あります。
 また、開園以来の皆さんに親しまれてきた旧子供動物園を6月29日に閉園して、一期工事の終わったふれあい動物園を一次オープンしましたが、二期工事で獣舎ができるプレーリードックもしばらく病院の住人となりました。その内の一頭はおじいちゃんで、旧子供動物園でも一頭で飼われていましたが、こちらでも他の個体と金網越しに独り暮らしです。おじいちゃんは歯が悪くて、野菜を細かく刻んだ特別食を作って貰って食べています。ケージ内には巣箱を入れてありますが、普段はその中に入らず、タオルをベッドにして悠々自適の生活です。
他にも、新しく日本平動物園にやってきて、お見合中のアカテタマリンや動物園の展示動物ではありませんが野鳥やタヌキ等の野生動物も入院していて、動物病院は賑やかな状態が続いています。

動物病院 金澤 裕司

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