でっきぶらし(News Paper)

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199号(2011年04月)4ページ

≪病院だより≫ショーグンとウッチー

 以前、この病院だよりでもお伝えしたことがありますが、旧こども動物園を閉園したため、プレーリードッグの獣舎がなくなってしまいました。そこで新しい獣舎が完成するまで、プレーリードッグは動物病院の住人となっています。今回はその内の二頭のおじいちゃんとおばあちゃんのお話です。
 おじいちゃんは平成一六年に三島市楽寿園で産まれ、平成一七年に来園したオスでショーグンという名前です。おばあちゃんは年齢不明で平成一七年に来園したメスでウッチーと言う名前です。
 動物病院に入院時は、ツヤタロウというオス一頭とウッチーと平成十九年生まれのメス二頭の合計四頭で群れを作って、ショーグンは一頭で飼育していました。しかし昨年の夏が終わる頃にツヤタロウが死亡してしまい、メス三頭だけで飼育していると、どうもウッチーが若いメス二頭に押されてきてしまったようで、あまり餌を食べていない様子が伺えました。そこでウッチーを若いメスと離してショーグンと同居することにしました。
 プレーリードッグは天敵などが近づいたときに「キャン、キャン」と犬のような鳴き声を出して、仲間に危険を知らせることから、「草原の犬=プレーリ−ドッグ」名前がつけられていますが、地上性のリスの仲間で、更に大きな分類ではネズミなどと一緒の仲間になります。この仲間は前歯が一生伸び続けますが、物をかじることで歯が削れて、適度な長さを保っています。
 ショーグンは昨年の九月に下の前歯が抜けてしまったので、咬み合わせる相手がいない上の前歯だけが伸びてしまうので、時々歯を削って手入れをして、餌も食べやすいように特別に野菜を細かく刻んだものを与えていました。
 同居してから二頭の仲は特に問題がなく、餌も食べているようでしたが、次第に、ウッチーの採食の様子がどうも芳しくなく、どの位食べているかを確認することが出来なくなってきたので、金網越しに二頭並べて飼育することにしました。段々気温も下がりはじめてきたので、赤外灯という保温用の灯りを点けてと床にペットヒーターを置いて、床全体にタオルを敷きました。    
 ウッチーはとても人に慣れた個体でケージの前を通りかかると大抵「ピーッ」と挨拶をしてくれました。掃除の時も敷いてあるタオルを変えようとすると、すり寄ってきて手にまとわりついてきます。「ちょっとどいてて」とケージの端っこに置いてやっても、すぐに傍にやってきてしまい、掃除の邪魔?をしてくれましたが、対するショーグンは端っこに置いてやるとそこで大人しく待っていました。
 段々寒くなり、冬将軍がやってくる頃には二頭とも食欲が不安定になってきて、軟らかいものを細かく切って与えたり、採食が少ない時にはミルクやビタミン剤等を与えたりしていました。
 年が明けると二頭とも寝ていることが多くなり、その寝姿も体を丸めて眠るのではなく、手足を投げ出してゴロンとうつ伏せに眠っていて、それでもウッチーは朝出勤して、ケージを見に行くといつも「ピーッ」と挨拶してくれていました。しかし、やがて朝一番では起き出すことが少なくなってしまい、そのぐったりしたような姿勢で寝ているので、「大丈夫か?」とまず呼吸をしているかを確認するようになってきました。何日かその様な状態が続いた後の二月二日朝にウッチーが亡くなっていました。死亡の原因は腫瘍でした。肝臓を中心に肺や脾臓にも腫瘍がありました。
 ウッチーの「ピーッ」という挨拶を聞くことが出来なくなって、寂しい思いをしていたら、それは私達だけではなかったようです。ショーグンもそう感じたのか、その翌日から採食が更にガクンと落ちて来てしましました。ただ飲み物は飲んでくれるので、ミルクにビタミン剤や栄養分として黄粉などを混ぜて飲ませたり、特製野菜ジュースを作って飲ませたりしました。でも段々飲む元気もなくなり、鳴き声を出そうとしても出ない状態になってきて、ウッチーが亡くなってから一一日目の二月一三日にショーグンはウッチーの後を追うように亡くなってしまいました。死亡の原因は腫瘍ではなかったのですが、肝臓がほとんど機能していなかったようです。
 動物園では動物が死亡すると、その原因を探り、自分達のしてきたことを検証するために解剖を行います。プレーリードッグの寿命については七〜八年、十年ちょっと等、色々な報告がありますが、今回亡くなった二頭の体の状態から見ても、二頭とも寿命に近かったと言えるのではないかと思います。飼育している動物達が出来るだけ健康に、幸せに長生きすることが出来るように、今回の経験も生かして行きたいと思います。

動物病院 金澤 裕司

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