でっきぶらし(News Paper)

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202号(2011年10月)2ページ

≪あらかると≫鳥の世界もいろいろあるんです

 みなさんこんにちは、今回は私の担当している猛禽類についての話をお届けします。
 私は今年の4月から新人飼育員として働いています。最初は個体の識別や性格などもさっぱりでしたが、約半年動物たちに接してみて、みんな愛嬌のある可愛い子たちだなと思うようになりました。日本平動物園にはハクトウワシ、ヒゲワシ、コンドルの3種類の猛禽類がいます。
 まずはヒゲワシについてです。ヒゲワシは日本で当園にしかいない非常に珍しい動物です。中国の蘭州市から贈与されて、もともとはつがいで暮らしていましたが翌年にはオスが死んでしまいました。メスはもう30歳を超えていますが今でも元気に暮らしています。部屋の掃除をするため中に入ると、たまに餌鉢の中に石が置いてあることがあります。ヒゲワシは野生では動物の骨等を空から落として中身の骨髄を食べることがあります。その習性からか、石を骨に見立てて遊んでいるのでしょうか?その石は何種類かあるみたいです。もし石が置いてあったら皆さんも注目して下さいね!
 次はコンドルです。コンドルはオスとメスのつがいで飼育しています。普段は仲良くしていますが餌やりの時は別です(オスはとさかがあるほうですよ)。昔はオスの方が体が小さくてメスに遠慮がちでしたが、今ではオスが大きく強くなって、餌を独り占めしようとするのです。いつもオスは食べるのに夢中で、大好きなニワトリの頭を一心不乱に突っついて、メスは骨もバリバリ噛み砕いて丸呑みしてしまいます。オスは食べるのがゆっくりなので、その隙にメスがヒョコヒョコと忍び寄り、結局はエサの多くをメスが食べています。   
 翼長3メートルの翼を広げて空を飛ぶ雄大なイメージのコンドルですが、餌やりの時のメスはなんだか泥棒?みたいな動きというか・・・、とても面白いのでエサやりの時に通りかかったら是非御覧になって下さいね。天気の良い日には、日光浴で大きな羽を広げて皆さんが来るのを待っているますよ。
 そして最後はハクトウワシの話です。ハクトウワシもコンドルと同じく、オスとメスを一緒に飼育しています。繁殖してくれたら良いなと思っているのですが、実はメスがオスよりも強いんです。コンドルとは雌雄の優劣が逆ですね。メスの特徴はいつも高い場所に止まっていて、甲高い大きな声でよく鳴いています。オスはというと、メスに良い場所を取られて、大体低い場所にいます。そしてあまり高い声では鳴かず、私と目が合うと「ゲッゲッ」と豚のような鳴き声であいさつをしてくれます。掃除を終えて餌を置くと、お腹の空いたオスがだんだんと餌に近づくのですが、あと少しのところでメスが、「アタシの方が先よ!」と言わんばかりにオスを追い払います。するとオスは「ピーッ!!」と、か細い鳴き声(泣き声でもある)を上げながら逃げて、恨めしそうにメスを見ていました。1番好きなニジマスを横取りしたり・・・、ある時は止まり木にいたオスに飛びかかって蹴り落としたり・・・、本当に女の子なのか?と思うくらいやさぐれています。それでも仲良く同じ枝に止まっている時もあるのですが、もっと仲良くならないものかと日々悩んでおります。ハクトウワシのペアは生涯連れ添うというのに、やれやれ。
 猛禽舎の日常はこんな感じですが、みなさんどうでしょう?少しは興味を持って頂けましたか?こんなうちの子たちをこれからもよろしくお願いします。

追記:現在は虫類館では展示していないアゴヒゲトカゲですが、この前オスがメスに求愛していました。求愛の仕草は頭を縦にぶんぶん振るのですが(さながらヘヴィメタルのような)、オスがメスに駆け寄って目の前で頭を振っていたら、メスが飽きれたように前足でオスの顔を押さえてしまいました。トカゲの世界でも恋の実りは、険しく遠い道のりなのだなぁと思いました。

飼育担当 久保 暁

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