でっきぶらし(News Paper)

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237号(2017年08月)1ページ

歴史に名を刻め!

 今年もまたレッサーパンダの赤ちゃんが生まれました!6月23日の深夜に生まれた赤ちゃんはすくすくと育っています。お母さんのホーマーは子育て上手。去年はホーリーを立派に育て上げてくれたので、飼育員たちも安心して任せています。
 
 日本平動物園のレッサーパンダの繁殖はこれで5年連続成功しています。今年も当然のように繁殖が成功したと思う方もいるかもしれませんが、実は毎年毎年何かしらの問題や苦労があるのです。今年は交尾がなかなか上手くいきませんでした。
 
 母親のホーマーはアメリカから来園した希少な血統の個体、なんとしても繁殖させなければなりません。その相手となるのは百戦錬磨のオレ様系レッサーパンダのタク。タクは今まで繁殖成功率100%、漢(おとこ)の中の漢。コイツに任せておけば大丈夫!と思っていました。同居の様子は時折ケンカは見られるものの順調でした。しかし、なかなか交尾をしません。担当者がまだかまだかと焦る中、3月中旬にようやく交尾をしたのですが、これがまた中途半端でホーマーはすぐに嫌がって逃げるし、タクは今までのガツガツした感じが無く、まるで草食系男子。なかなか交尾が上手く続かない中、ようやくホーマーが諦めて受け入れ体勢になり、「頼む、このまま最後まで・・・」と担当者は祈りましたが、そうすんなりと事は運びません。
 
 2頭の交尾をずっと柵越しに眺めていたスミレ(日本平の脱走女王)。実はこの時スミレにも発情が来ていたのです。そしてなんと交尾中のタクの背中を柵越しにとんとん叩きだしたのです。スミレもタクに「そんなアメリカ女なんかよりアタイと遊ばない?」なんて誘いをかけたのかもしれません。「おいやめろ!今大事なところなんだ、余計なことすんな!」という心の叫びは無情にも届かず、スミレに目移りしたタクの隙を突いてホーマーが逃げ出しました。今までレッサーパンダが柵越しに対峙しても鼻先を合わせるくらいで、手を伸ばして相手を触るなんてことは一度も見たことがありませんでした。交尾が中途半端に終わり本来なら飼育員として困惑するところですが、現実に2兎追うものは1兎も得ずを見て苦笑いしてしまいました。
 
 タクとホーマーの同居はこのような幕引きでしたので、どうせあんな中途半端な交尾じゃ妊娠しないだろうと、半ば諦めモードで出産の準備だけはしていたのですが、まさかちゃんと赤ちゃんが生まれるとは・・・(泣)ありがとう、タク!あんたはスゴイ!今後確実に受け継がれていくであろうホーマーの血統に名を刻んだタク。世の男性諸君は彼を見習いましょう。
 
 タクの話ばかりになってしまいましたが、赤ちゃんはどんどん大きくなるので、これからの可愛い時期をお見逃しなく!日本のレッサーパンダの未来を担った御子の成長を見守って下さいね。
 
(飼育係  久保 暁)

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