でっきぶらし(News Paper)

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242号(2018年06月)2ページ

幸せコロブス夫婦のお話

 またサルの話ですか?またサルの話ですよ!今回はアビシニアコロブスのお話です。
 昨年12月に上野動物園より来園した、アビシニアコロブスのクレイオ(♀)が2月20日から公開になりました。なぜ公開までこんなに時間がかかったのかというと、公開前の健康診断にひっかかったからです。本人は元気だったのですが、お腹の中に弱毒の寄生虫が見つかったのです。このまま当園のロン(♂)と同居すると、ロンに感染する恐れがあります。そこで、寄生虫を駆虫してから同居訓練を行い、公開しようということになりました。しかしこの寄生虫がなかなかしぶとく、駆虫に時間がかかってしまったため、こんなに公開が遅れてしまったのです。
 さて、クレイオとロンの初顔合わせから同居するまでのお話の前に、アビシニアコロブスのお嫁さんをもらうことになった経緯を少し・・。アビシニアコロブスは本来、一夫多妻の群れを作り、木の上で暮らしています。野生下では、他のサルとの混群もみられる気性の穏やかなサルです。一方、臆病なところもあり、特にロンは一昨年に前妻・キャサリンを亡くしてからすっかり沈んでしまっていました。そんなロンに対しても両隣のブラッザグエノンとシシオザルは容赦なく威嚇し、ロンは肩身が狭そうでした。そんな経緯で、キャサリンが亡くなってからほとんど間を置かずにロンのお嫁さんを探し、クレイオがやってくるまで1年以上。いろいろあったのですが、長くなるのでこのお話はまたの機会に。
 クレイオの駆虫も無事できて、ようやく2月11日にロンとのお見合いを開始。初めてロンと顔を合わせたクレイオは驚いてしまったようです。しかし、いざ同居となると、クレイオの方からロンに近づいて行ってくれました!しかも交尾まで確認できてしまいました!これは驚きです。感触は良好かと思いましたが、それもつかの間。ロンがしつこく迫り始めるとクレイオは嫌がって逃げます。捕まるとロンに往復ビンタを食らわす始末。ロンが嫌われる前に別居させ、初日は終了。その日から毎日ビンタと別居を繰り返し、ようやくビンタされなくなったタイミングで公開へと至りました。これはお互いの距離感をつかめた証拠ですからね。
 ここで獣医さんたちの感想、「サルのケンカってこんなにおだやかだっけ?」
 そうなのです。サルのケンカはもっと激しいのが一般的。追いかけ捕まえて、噛んで、やられた方の体に穴が空くとかいう話を聞くくらい激しいのです(幸いまだ私はそこまでひどいケンカを目にせずに済んでいるのですが)。サルのケンカをそのレベルで想定していた獣医さんたちには彼らのケンカは拍子抜けだったようです。当然、本人たちは必死ですが。私から見ても正直、必死にビンタする姿がかわいかったよ、クレイオ。
 公開してからというもの、ロンはクレイオにデレデレ。幸せオーラを全身で出していました。両隣が威嚇してきても、寒い日も寄り添えるパートナーがいることで安心したようですね。記事を書いている今は、ロンの幸せオーラも少し落ち着いてきました。お互い良い距離感で日々を過ごしています。ロンをボスとして上手に立ててくれる良妻・クレイオが、賢母となる日が楽しみですね。
 (増田 知美)

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