でっきぶらし(News Paper)

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247号(2019年04月)3ページ

婚活

 もうすぐ春ですねぇ~♪恋をしてみませんか~♪昭和を代表するトップアイドルグループのワンフレーズ。もっぱら私はスーちゃん派!で、フジは?『あ、いやごめん・・。』当園では現在3頭のアムールトラを飼育していますが、今回はフジのお話をさせていただきます。
 フジの嫁として何年も相手を探し続けながら、なかなかお相手が見つからず、何が原因?フジのマザコンがばれた?いやいやこの情報はごく一部の飼育員と獣医しか知り得ないしとトンチンカンな考えも出始めていた頃、上司から7月に嫁が来るよ!との朗報。動物園の使命として「種の保存」というものがあり、絶滅危惧種となっているアムールトラの繁殖=フジの嫁探しは喫緊。その分、アドベンチャーワールドからノゾミ(メス)が日本平動物園の地に足を踏み入れた時は感動しましたね。美人で奥ゆかしさもありマザコン亭主も許す器も。ひいき目かも知れないがそんな様に見えました。はいどうも間違いでございました・・・。とてつもない恐ろしい鬼嫁。いや激鬼!同居の前に必ず檻越しのお見合いを2~4週間程度させて良好な関係が見られれば同居と至るのですが、初日から牙を剥き出してフジ、ナナ、飼育員に対して威嚇の雨あられ。フジは後退り、ナナは震え上がり、私が肉のバケツを持ってバックヤードに入れば立ち上がり檻越しに突進してくる。放飼場に出せば、ほぼ垂直な擬岩を駆け上がり上の溜池で行水。設計上行けるはずのない場所も縦横無尽に飛び跳ねるおてんばぶり。フジのストレスを考慮しノゾミが帰ってくる前に、相手方が見える柵を板で塞ぎました。フジ、鬼嫁連れて来ちゃって『ごめん・・・』。ところが何日か後、ん?板の隙間でフジがノゾミを怖々覗いている。覗きがばれるや否やノゾミの威嚇。フジ後退りするもフジ覗く。人間界では覗きの罪でお縄だが、フジにとっては待ちに待った念願の嫁。いくら怒られようが覗き続ける。その思いが通じたのか次第にノゾミにも変化がみられました。なんと互いに鼻を鳴らす行為(挨拶、スキンシップ、好意の意味あり)が始まり、柵の板を外してもノゾミは威嚇をしてきません。むしろ互いに柵越しに身体の擦り合いをし合うまでになってきました。またネコ科特有の仰向けになりノゾミがゴロにゃん♪ゴロにゃん♪と甘えたポーズなども。お見合い130日目、フジが放飼場に出ていくとノゾミが寂しさのあまり大音響の鳴き声で泣き続けるまさしく発情でした。後日、同居を放飼場で行う事が決まったが何せトラの同居、直接の触れ合いなどでケンカが始まってしまえば大惨事に。いざという時に2頭を引き離せるよう職員が2階、3階で高圧ジェット洗浄機を持ち、待機させての初同居となりました。フジが迎えに行くが「あの」ノゾミが、しおらしくなっている。互いによそよそしいが鼻を擦り付け合いから序盤は良さげな感じ。その後寄り添いフジを受け入れてくれました。直後、ノゾミから近づきフジにマウント体勢を取りやすい体勢をしてくれ、その行為に甘えフジ、ノゾミに乗るがそこから何をしてよいのか悩む。そうこうしている間にノゾミに逃げられる「フジがんばれ!」悩む、逃げられ「フジ抱け!」悩む、逃げられ「なんで!」また悩み、また逃げられ「うそでしょ~」。その後ノゾミに猫パンチされフジ意気消沈「なんでだよ~フ~ジ~・・」。受け入れてくれていたのに・・。ノゾミ、鬼嫁いや激鬼と言って『ごめん・・・』。本当は優しい女性だったんだね。次はフジ頑張るから・・。もうすぐ春ですねぇ~彼を誘ってみませんか~♪
(市川 雅一)

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