249号(2019年08月)4ページ
ペンギンの子育て
もうすぐ9月なのに、まだまだ暑いですね!こんな暑い時には是非、ペンギン館にお越しください。たくさんのフンボルトペンギンたちがプールで気持ちよさそうに泳ぐ、涼しげな姿をご覧になれますよ。
さて、泳いでいるペンギンたちをよ~く見てみると…この中に2羽だけ、顔と体の模様が他の個体とは違うペンギンがいます。種類が違うの?と聞かれることが多いのですが、実はこの2羽は今年の1月と4月に生まれた子供のフンボルトペンギンなんです。フンボルトペンギンの子供は、産まれた次の年の換羽(全身の羽が一気に生え変わる)の時までは大人とは違う模様をしています。フンボルトペンギンの特徴である、白と黒の模様ではなく、全身が青っぽい色をしています。体の模様は大人と違いますが、大きさは生後3か月で大人と同じくらいになりプールでスイスイと泳ぐことができるようになります。今年生まれの2羽も羽繕いをしたり潜ったりと上手に泳いでいます。
ペンギンというと見た目がそっくりでどの子も同じように見える!という方も多いと思います。2羽の子供たちも、無事に大きく育ったので、体の大きさも体格もそっくり…飼育員もパッと見ただけでは見分けるのが難しいくらいです。しかし、性格は正反対でよく観察してみると、とっても個性豊かなんです。今回は2羽の子供とその両親についてご紹介します。
1月生まれの子供は父親が若冲、母親はオレオです。若冲は、日本平で1番気が強いペンギンで、巣に近づくものは容赦なく突きます。そんな若冲ですが、実は巣の中では奥さんに尻に敷かれていて…。オレオは、卵を温めるのは面倒なのか、若冲にまかせっきり。餌も食べに行かずに卵を守る若冲を尻目に、プールでプカプカ泳いでいたりします。でもヒナが生まれると急に旦那を押しのけて巣にこもり、今度はヒナのエサの魚を取りに行くのを若冲にまかせっきりに。旦那を顎で使う、かかあ天下です。この2羽は4羽の子供を育てたベテラン夫婦で子育ての仕方は過保護気味。卵が産まれるとただですら気の強い若冲がパワーアップ!魚を与えようとして近づいても、突いてきます。愛情たっぷりに育てられ甘えん坊に育ったヒナは、体が大きくなってもピーピー鳴いて親にエサをねだっていました。普通は生後4~5か月ほどで、飼育員が与えた魚を食べ始めますが、このヒナは7月になってからやっと自分でご飯を食べ始めるようになりました。人間に対する警戒心も強く、近づくと一目散に逃げていきます。
4月生まれの子供は父親がオーシャン、母親はマッハです。オーシャンは昨年の10月に埼玉こども動物自然公園から来園したばかり。来園当初は手当たり次第に人(ペン)妻にアタックしていたプレイボーイです。姉さん女房のマッハと夫婦になって、やっと落ち着いたと思ったのですが…埼玉が恋しくなったのか、3回も脱走しようと試みてすんでのところで飼育員に確保されました。マッハはマイペースな性格で、オーシャンと出会うまでは一羽でいることが多かったですが、オーシャンと夫婦になってからは若い旦那を献身的に支えています。フンボルトペンギンの親は、ヒナが外敵に襲われたりしないように、ある程度の大きさに育つまでは、片方の親が巣に残ってヒナを守ります。しかし、この夫婦は動物園には外敵がいない!と安心しきっているようで、ヒナが生後1週間もたたないうちにオーシャンとマッハの両方がプールにエサを取りに行ってしまいました。ヒナは一人っきりで巣に取り残され、最初は不安そうにキョロキョロしていましたが、しばらくして巣を覗くと親がいなくてもスヤスヤと寝ていました。飼育員が心配して近づいても、大人顔負けに突いてくる図太さです。そのため、大きくなっても堂々としていて掃除の際にちょっと向こうに行っててよ~と近づいても、「何?」というように首をかしげて動いてくれません。大人になったらどんな親になるのか、今から楽しみです。
このように見た目はそっくりでも、観察してみると、それぞれの性格が出ていて面白いのがペンギンの魅力です。現在ペンギン館には22羽のペンギンが暮らしています。実は日本平動物園では、左右どちらかの翼に、翼帯(よくたい)という色違いのタグが付いていて、簡単に見分けることができるんです。子供たちの翼帯の色は……ペンギン館に来てからのお楽しみです。みなさん是非、お気に入りの子を見つけてみてくださいね!
江林 奏絵