でっきぶらし(News Paper)

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253号(2020年04月)3ページ

「癒し系イクメン ナンバーワン!」

 当園の今年のカレンダーにめでたくアビシニアコロブスが採用されました!ロンは間違いなく日本平動物園の癒し系イクメンナンバーワンです。異論は認めません(笑)。
  
 ロンは妻クレイオと息子ピンとの3頭暮らしです。同居してすぐからクレイオにデレデレのロンでしたが、いまだにその様子は変わらず、クレイオの背中に寄りかかったり、しっぽを枕にしながら昼寝したりしています。またピンのことも溺愛していて、最近ではロンとピンが一緒にいることも多くなってきました。普通サルの父親はそこまで子供に関心がなく、子供も父親には遠慮気味なことが多いのですが、ロンは生まれて間もないピンに触ってクレイオにビンタされるくらい関心があります。父親は力加減ができないため、生まれたばかりの赤ちゃんは触らせてもらえないのが普通です。なので触ると母親にめちゃくちゃ怒られます。ロンはそれでもめげずに隙をみて触ろうとしていましたが。ピンが自力で動き回るくらい大きくなってからは母親の許可も下り、じゃれ合ったり、床でごろごろしたりと楽しそうです。ただ、ピンによくしっぽをターザンロープ代わりにされているため、ちょっとしっぽが薄毛になってきてしまいました・・・。

 ロンのイクメンぶりが一番発揮されるのは夕方寝室に帰る移動です。コロブスに限らず、サル達は寝室と放飼場の間の通路を通るのが苦手で、大人達も尻込みします。そのため子供も最初は一人で部屋間の通路を通るのを怖がり、抱っこをせがんで拒否されて、置いて行かれて、「ママー!迎えに来てー!」という感じで鳴き叫ぶ、というのがお約束です。サル達は群れの仲間がはぐれると必ず迎えに行きます。子供ならなおさら、まず先に母親が迎えに行きます。母親が何度帰るように促しても帰ってこないと「やれやれ」って感じで父親が迎えに行きます。これを何度も繰り返しているうちに子供が一人で帰れるようになります。ピンも例に漏れず、先にクレイオが迎えに行きます。ただ、ピンの場合はロンも寝室から舌打ちのような鳴き声で呼びます。それでも帰ってこないと通路の寝室側の入り口まで降りてきて呼び、放飼場まで迎えに行くという熱心ぶり。最近ではクレイオが放飼場側の通路の入り口まで連れていき、先に寝室に帰ったロンがご飯を片手に寝室側の入り口で呼び、呼ばれて通路に入ったピンをクレイオが後ろから追うように寝室に帰す。というコンビネーションプレーでピンに帰ることを教えてくれています。まだたまにどうしてもピンが帰らない時があり、ピンのみ放飼場に閉め出すことになると、「うちの子がまだ外にいるから開けろ!」と夕飯に目もくれずクレイオと一緒にドアを叩きます。ものの数分でも分断されるとピンが心配でたまらないようです。ドアを開けると2頭一緒に迎えに行き、ロン、ピンを抱っこしたクレイオの順で帰ってきます。寝室に戻ってからは3頭仲良く夕飯タイムです。

 同じ餌場から仲良くご飯を食べるところも気性が穏やかで家族仲が良いコロブス一家ならではです。中型サル舎で「癒し系」の名をほしいままにしている所以です。ただでさえ癒し系なコロブスですが、ロンは特に天然で、隙だらけです。ピンにもクレイオにも横からおやつをかすめ取られています。そしてそれに気が付かない…。ボスとして威張っているオスが身内に対してはこれくらい抜けている方が平和なのかもしれません。

 さて、最後に余談ですが、ピンはいくつかの候補のうちから多くのお客様の投票により「ピン」と名付けられました。「ピン」は漢字で書くと「平」です。日本「平」動物園初繁殖個体で、誕生日の11月11日は世界「平」和記念日。とても「平」に縁深いというのが決め手だったようです。たくさんの投票ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。これからもアビシニアコロブスの一家をあたたかく見守っていてください。

(増田 知美)

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