でっきぶらし(News Paper)

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255号(2020年08月)2ページ

ライオンにまつわるお話

 今回は猛獣館2階に展示しているオスライオン(キング)の話をさせてもらいます。当園のライオンの話の前にライオンと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「百獣の王」ではないでしょうか?本当に一番強いのでしょうか?確かにライオンに天敵はいません。ただ一番強いかと言われれば疑問です。獲物としてアフリカゾウを狙うかと言えばめったに狙いません。ライオンは大きくても体重250キロ前後。メスのアフリカゾウで6トン前後、オスでは8トン以上あるためゾウには敵いません。可愛らしいキリンでさえ後足で蹴り上げられたらひとたまりもありません。当然カバにも近づかないです。

 次に「ネコ科で最も大きく、生態は群れ(プライド)を形成し集団で狩りをする。」とも良く聞きますが体の大きさから言うとネコ科で2番目。1番はアムールトラで300キロを超えるトラもいるのですよ。またライオンは集団行動で狩りをします。アフリカにいるライオンは草原や砂漠のような環境に生息しているため周りにほぼ身を隠せる事が出来ないのです。そのため対象者から常に警戒されながらの狩りのため集団で連携し効率を高めているのです。他にも「狩りはメスに任せてオスは寝てばかり。メスが獲物を捕えれば真っ先に食べるのはオスなど典型的なだめ亭主」などなど。実はオスも足は早いのですよ!ただ心臓が小さく持続力がメスに比べて劣ります。狩りはメスに任せてオスはプライドを守る事に専念します。しっかりと役割が決まっているのですね!

 それでは当園のライオンはと言いますと、たくさんの草食動物や有蹄類などいますがライオンの放飼場の回りは脱出防止用の電柵があり狩りは出来ません。また、メス同士(マッチ、ムール)めちゃくちゃ仲が悪く3頭仲良く集団行動できません。でもですよ!動物園ならではのミスマッチもあるんです。生息地が異なるアムールトラと室内展示がほぼ向かい合わせのため毎日顔を合わせ様子をお互い観察しあったりしています。自然界では見られない光景なので是非見に来て下さい。

 最後にオスのキング(19才)の近況報告させてもらいます。今現在(6月30日)放飼場に出していません。今年の1月17日、左後足に違和感があり軽い跛行(はこう)がみられ嫌な予感が脳裏を過ります。キングも7月3日で20才。今年の2月に亡くなったアムールトラのナナ(21才)、平成30年にジャガーのアラシ(16才)、平成30年ピューマのリンカーン(17才)、平成31年エリザベス(17才)、全ての個体に共通して言えるのが老齢で後足の跛行がみられ徐々に歩行が困難になっていく事です。4月、キングも四足では歩くのが困難になり、放飼場に出すのは断念。寝室にわらを敷き詰め盾を持ち獣医と共にキングのいる寝室に入っての治療が始まりました。汚れたワラを交換し補液(4リットル)、注射(抗生物質など)、採血、褥瘡(床擦れ)の処置、手差しで餌を与えるなどしながら懸命な治療を進めています。たまにガオガオ怒りながらも頑張っているので是非応援していて下さい。隣部屋の治療中のキングが気になるのかマッチ、ムールも部屋を覗き見しながら寂しげな様子。また大好きなマッチとムールが横に来るとキングは寝ながら鳴いて喜びます。七夕の願いに非現実、無理難題を願うつもりは毛頭ございませんが願いが叶うのなら『7月3日の誕生日に大好きな骨付き肉を食べさせたい!』頑張ろうキンちゃん‼ お友達の飼育員より。

※ライオンのキングは7月10日に老衰のため亡くなりました。
  
(市川 雅一)

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